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EUタクソノミー:持続可能性報告に取り組む企業のための実践ガイド

基礎知識
Jasmine Saini
Jasmine Saini
シニアカーボンコンサルタント
EUタクソノミー:持続可能性報告に取り組む企業のための実践ガイド

要点まとめ

  1. EUタクソノミーは、企業ではなく経済活動を分類する枠組みである。企業は自社の活動のうちどれが「適格(eligible)」であり、どれが「整合(aligned)」しているかを評価し、売上高、設備投資(CapEx)、事業運営費(OpEx)に占める該当割合を開示しなければならない。
  2. オムニバス指令の施行に伴い、義務的な報告の対象となるのは、従業員数1,000人超かつ年間純売上高4億5,000万ユーロ超の企業である。この基準を下回る企業も任意で報告することができる。
  3. EUタクソノミーの開示は、CSRDレポートの一部として行われるものであり、単独では行われない。CSRD対応を進めている企業は、タクソノミー評価を同じプロセスに組み込む必要がある。

サステナブルファイナンスの分野には、言葉の定義があいまいだという問題がある。「グリーン」「サステナブル」「環境に配慮した」といった言葉はほとんど何にでも当てはめられてしまい、そのあいまいさは現実のリスクを生む。真に持続可能な活動に資本を配分しようとする投資家にとっても、信頼できる主張をしようとする企業にとっても、そして両者に説明責任を課そうとする規制当局にとっても、である。

EUタクソノミーは、この問題を解決するために存在する。これは「実際に何が環境的に持続可能だと言えるのか」という問いに対して、共通の、法的に定義された答えを示す分類の枠組みである。企業が独自に定義した主張に頼るのではなく、経済活動を評価するための技術的な基準を定めている。ある活動がその基準を満たせば、EU法上「環境的に持続可能」とみなされる。基準を満たさなければ、その活動がどのように説明されていようと、持続可能とはみなされない。

EUタクソノミーとは何か

EUタクソノミーは、EU法の下でどの経済活動が環境的に持続可能とみなされ得るかを定める分類システムである。EUの「サステナブルファイナンス行動計画」の一環として策定され、タクソノミー規則(Taxonomy Regulation)は2020年7月12日に発効した。発足当初、タクソノミーが対象としていた環境目的は「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」の2つのみであった。この2つの目的に関する技術的スクリーニング基準は2022年から適用された。残りの4つの目的、すなわち水資源、循環経済、汚染、生物多様性に関するものは2024年に追加され、現在の6つの目的からなる枠組みとなった。

ここで最初に明確にしておくべき重要な区別がある。タクソノミーは企業を「持続可能」あるいは「持続可能でない」と分類するものではない。分類の対象はあくまで経済活動である。ある企業が、タクソノミーに整合する活動と整合しない活動の両方を持つことは十分にあり得るし、むしろ想定されていることである。

企業に求められているのは、自社のどの活動がタクソノミーの委任法令(delegated acts)の適用範囲に含まれるかを評価することである。委任法令とは、欧州委員会が各活動・各目的について詳細な要件を定めるために用いる拘束力のある法的文書である。対象となる活動については、企業はその活動が整合基準を満たすかどうかを評価したうえで、売上高、設備投資(CapEx)、事業運営費(OpEx)のうちどの程度の割合が該当するかを開示しなければならない。

6つの環境目的

EUタクソノミーの下で評価されるすべての活動は、以下の6つの環境目的のうち少なくとも1つに実質的に貢献し、かつ他のいずれの目的にも重大な害を及ぼしてはならない。

  1. 気候変動の緩和 — 温室効果ガス排出量の削減・回避
  2. 気候変動への適応 — 気候変動による現在および将来の影響に対する脆弱性の低減
  3. 水資源および海洋資源の持続可能な利用と保護 — 水域および海洋生態系の保護
  4. 循環経済への移行 — 廃棄物の削減、再利用・リサイクルの促進、回収不可能な素材の排除
  5. 汚染の防止と管理 — 大気、水、土壌の汚染の削減
  6. 生物多様性と生態系の保護と回復 — 生息地、種、生態系サービスの保全

何をもって活動が「タクソノミー整合」とみなされるか

ある経済活動がEUタクソノミーに整合しているとみなされるためには、以下の4つの条件すべてを満たす必要がある。

  • 実質的な貢献(Substantial contribution):当該活動が、委任法令に定められた具体的な技術的閾値に照らして、6つの環境目的の少なくとも1つに意味のある形で貢献していること。
  • 重大な害を及ぼさないこと(Do No Significant Harm、DNSH):当該活動が、他の5つの環境目的のいずれにも重大な害を及ぼさないこと。例えば、気候変動の緩和に貢献する活動であっても、生物多様性に重大な害を及ぼす場合は整合とはみなされない。
  • 最低限のセーフガード(Minimum safeguards):当該活動が、OECD多国籍企業行動指針および国連ビジネスと人権に関する指導原則に沿った、基本的な社会的・ガバナンス基準を遵守して実施されていること。
  • 技術的スクリーニング基準(Technical screening criteria):当該活動が、その活動・目的に関連する委任法令に定められた具体的なパフォーマンス閾値を満たしていること。

整合性の評価に入る前に、企業は2つの用語の違いを理解しておく必要がある。ある活動は、その種類の活動に対応する委任法令が存在する場合に「タクソノミー適格(Taxonomy-eligible)」とされる。そして、上記4つの基準すべてを満たす場合にのみ「タクソノミー整合(Taxonomy-aligned)」とされる。適格性の判断が先にあり、整合性の判断はその後である。

誰が報告義務を負い、何を開示しなければならないか

オムニバス指令の施行により、EUタクソノミーの義務的報告の対象は現在、従業員数1,000人超かつ年間純売上高4億5,000万ユーロ超の企業である。この基準を下回る企業も、任意で報告を行うことができる

対象企業は、以下の3つの主要業績指標(KPI)を開示しなければならない。

  • 売上高KPI:タクソノミー整合活動から得られる総収益の割合
  • CapEx KPI:タクソノミー整合活動に関連する設備投資の割合
  • OpEx KPI:タクソノミー整合活動に関連する事業運営費の割合

各KPIについて、企業は「適格」の割合と「整合」の割合の両方を報告しなければならない。これらの開示は、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)に基づくサステナビリティ報告書の一部として行われるものであり、独立した届出としては行われない。

なお、各KPIについて、総売上高、CapEx、またはOpExの10%未満を占める経済活動については、タクソノミー評価の対象から除外することが認められるようになった。10%以上を占める活動については、引き続き評価・報告の対象としなければならない。これにより、活動全体について整合性データが完全には揃っていない場合でも、重要な活動については報告できるようになっている。

オムニバス簡素化措置による変更点

オムニバス指令は2026年2月24日に正式に承認され、2026年3月18日に発効した。これにより、EUタクソノミーの実務運用にはいくつかの重要な変更が加えられた。

  • 適用範囲の縮小:CSRDの基準は現在、従業員数1,000人超かつ年間純売上高4億5,000万ユーロ超の企業に適用される。EUタクソノミーの開示はCSRDレポートの一部として行われるため、同じ基準が適用される。従来のCSRD基準では対象とされていたが、従業員数1,000人に満たない企業は、報告義務の対象外となった。
  • 報告様式の簡素化:オムニバスにより、従来の枠組みと比較して必要なデータ項目を大幅に削減した簡素化タクソノミー報告様式が導入された。企業は、2026年に終了する事業年度については、新しい簡素化様式と従来の様式のいずれかを選択して使用できる。これにより、新たな要件が本格的に適用されるまでの準備期間が確保される。
  • 任意報告:適用対象外となった企業についても、投資家や顧客からタクソノミー整合性について問い合わせがある場合などには、引き続き同じ枠組みの下での任意報告が選択肢として残されている。
  • CSRD・ESRSとの整合性向上:オムニバスにより、EUタクソノミーの開示と欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)との構造的な整合性が改善され、CSRD対応を進める企業の重複作業が軽減される。

EUタクソノミーとCSRDの関係

EUタクソノミーの開示は、CSRDとは別の独立した業務ではない。CSRDサステナビリティ報告書の環境セクションの一部として報告される。初めてCSRD報告書を作成する企業は、タクソノミーへの対応を別プロセスとしてではなく、同じプロセスの一部として組み込む必要がある。

タクソノミー整合性のために必要となるデータ収集・評価作業は、そのままCSRDの開示に活用できる。これらを別々の作業として扱う企業は、作業の重複を招くことになる。ESPR(持続可能な製品のためのエコデザイン規則)の対象でもある企業にとっては、ESPRが求める製品レベルの環境データ(ライフサイクル影響、素材構成、サプライチェーン排出量を含む)は、製造活動に関するタクソノミー評価とCSRD開示の両方に用いられるデータの多くと重なっている

EUタクソノミーへの着手にあたって

現時点で対象企業であるかどうか、あるいは今後要件の変化に伴い対象となる可能性があるかにかかわらず、今のうちに取り組んでおくべき3つのステップがある。

  • タクソノミー適格な経済活動を特定する。 6つの環境目的に関する委任法令を確認し、自社の経済活動と照らし合わせる。すべての活動が対象となるわけではないため、何が適格で何が適格でないかを明確にすることが、整合性評価に入る前の不可欠な第一歩となる。
  • 技術的スクリーニング基準に照らして整合性を評価する。 適格な活動については、実質的な貢献、DNSH、最低限のセーフガード、技術的スクリーニング基準という4つの基準を一つずつ確認していく。最も技術的に難易度が高いのは通常、関連する委任法令に定められた具体的なパフォーマンス閾値への準拠を示すことであり、これはセクターや活動の種類によって大きく異なる。
  • タクソノミー評価を、初めからCSRDのデータ収集サイクルに組み込む。 別々に進めてしまうと、報告作業が始まってからでは解消しづらい重複が生じる。

まだ対象企業でない場合も、投資家、金融機関、顧客からすでにタクソノミー整合性について問い合わせを受けているのであれば、任意開示を検討する価値がある。

Zeveroができること

EUタクソノミーの開示はCSRDレポートの一部として行われるものであり、その根拠となるデータは構造化され、追跡可能で、監査に耐えるものである必要がある。ZeveroのAI搭載ESGレポーティングツールは、既存の文書をCSRDをはじめとするグローバルな枠組みに整合したESGレポートへと変換する。

初めてEUタクソノミー評価に取り組む企業、あるいは活動を委任法令に照らしてマッピングしようとしている企業は、Zeveroの専門チームにご相談ください。

FAQs

EUタクソノミーはEU域外の企業にも適用されますか?
EUタクソノミーの対象となるセクターは何ですか?
EUタクソノミーとEUグリーンボンド基準の違いは何ですか?
EUタクソノミーはサイエンス・ベースド・ターゲット(SBT)とどのように関係しますか?

お読みいただきありがとうございます。

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