包装はかつて、主にブランディングと物流の領域でした。現在は、コンプライアンスコスト、排出量報告、サプライチェーン戦略を形作る主要な要素の一つです。英国のEPR制度とEUのPPWRの施行により、包装に関する意思決定の重要性は大きく高まりました。これらの枠組みは、報告の方法だけでなく、企業が何を優先すべきか自体を変えつつあります。先日のウェビナーセッションでは、Zevero社とEcosurety社の専門家が、これらの規制が包装と気候戦略に与える影響を詳しく解説しました。コンプライアンスやカーボン目標、またはその両方への対応を進めるうえで、知っておくべき要点を以下にまとめます。
EPR(拡大生産者責任)とPPWR(EU包装・包装廃棄物規則)が包装の重要性を高める
EPR: Extended producer responsibility for packaging(拡大生産者責任)
英国のEPR枠組みは、従来の包装規制から大きく転換しました。責任はもはやサプライチェーン全体で分担するのではなく、単一の「義務を負う生産者」(一般にブランドオーナーまたは輸入業者)に帰属します。EPRの手数料はリサイクルだけでなく、家庭からの回収を含む廃棄物管理の全費用を賄います。
重要なのは、手数料が「リサイクルしやすさ」に応じて調整される点です。英国のリサイクル評価手法(RAM:Recyclability assessment methodology)で「赤」評価の素材は、リサイクル可能な代替素材より大幅に高額になります。乗数は年々引き上げられます。
- 2026年:基本料金の1.2倍
- 2027年:1.6倍
- 2028年:2倍
初回徴収は2025年10月が期限で、対象は2024年に市場に投入された包装です。つまり、現在使用している包装材について、まだ影響を実感していなくても、すでに高いコンプライアンスコストが確定している可能性があります。
PPWR: Packaging and Packaging Waste Regulation (包装廃棄物規則)
EUのPPWRは、リサイクルにとどまらず、さらに広い要件を導入しています。主なポイントは次のとおりです。
- 容積効率規則:過剰な空隙を罰則の対象とする
- 特定用途の素材制限:ホテル用小袋や店内飲食用包装などの使い捨て形態に制限
- 最低再生材含有率:消費後再生材(PCR)のみで達成可能な基準を設定
- 再利用可能性の義務化:輸送用包装や外食産業向け容器などで再使用を義務化
これらの変更により、包装はサプライチェーンの周辺的な事項から、企業の中核的なサステナビリティ課題へと位置づけが変わります。
包装によって扱いが変わる
規制は包括的ですが、すべての包装が同じ扱いになるわけではありません。英国では、EPR(拡大生産者責任)に基づく廃棄物管理費用は家庭用包装にのみ適用されます。これは通常、消費者のごみ箱に廃棄される一次包装を指します。
B2B(企業間取引)環境でのみ使用される包装は免除され得ますが、その証明には高い水準の根拠が求められます。
再利用可能な包装も奨励されています。生産者は、その品目が何度再使用されても廃棄物手数料は一度のみの支払いです。さらに、英国で導入予定のデポジット・リターン・スキーム(Deposit Return Scheme:DRS)の対象容器は別のコンプライアンス制度で扱われるため、EPRの廃棄物管理手数料は発生しません。
英国とEUの両方で販売する企業にとって、これらの違いを理解することは、報告不足や回避可能な罰則を防ぐうえで不可欠です。
規制対応のための包装データを、脱炭素に役立てる
包装規則が重要なのは、排出量報告と密接に連動しているためです。包装に伴う排出量の大半はスコープ3に該当し、購入した製品・サービス、輸送、廃棄物処理に伴う排出が含まれます。
EPRやPPWR対応のために収集するデータ(材質、重量、調達先、リサイクル可能性など)は、排出量計算にも不可欠です。
つまり、コンプライアンスのためのデータは二重の役割を果たします。温室効果ガスプロトコル、B Corp、CDP、CSRD、ISSBなど枠組み横断の気候報告を支える基盤にもなります。内部システムを早期に統合すれば、重複作業の削減、報告負担の軽減に加え、環境パフォーマンスに関する新たな示唆が得られます。
調達・サステナビリティ・包装の意思決定をつなぐ
多くのブランドにとって最大の障壁は規制そのものではなく、社内の連携不足です。調達はコスト最適化、サステナビリティは環境成果、マーケティングはデザイン上の判断(ときにリサイクル性へ影響)に注力しがちで、これらの相互作用やトレードオフを継続的に追跡する主体が不在な場合があります。
変化する環境を的確にナビゲートするには、部門横断の連携が鍵です。調達・オペレーション・サステナビリティ・マーケティングを共通のロードマップで統合し、全体目標を共有しつつ、各機能に適したKPIを設定しましょう。例:
- 調達:コンプライアンスコストの低い素材や再生材比率の高い素材への移行
- オペレーション:包装重量の削減、製造工程のエネルギー使用量削減
- マーケティング:リサイクル性を損なう恐れのある仕上げ・デザイン要素の把握
縦割りで動くとトレードオフを見落とします。連携すれば、より迅速かつ効果的に前進できます。
包装の利点と不利は、単純に割り切れない
現代の包装に関する判断では、コンプライアンス・排出量・コストを多面的に評価する必要があります。
たとえば、プラスチックからガラスへの切り替えはブランドイメージやリサイクル性を高める一方、輸送時の排出増を招く可能性があります。排出量の少ない素材でも、リサイクル可能性評価(RAM)で非リサイクル分類となれば手数料が高くなることがあります。新しいデザインが気候目標を満たしても、PPWRの要件に適合せず販売不可となる場合もあります。
この複雑性を乗り越えるにはシナリオモデリングが有効です。実データに基づき、変更が排出量・リサイクル可能性・コンプライアンスコストに与える影響を検証することで、より賢明で情報に基づく意思決定が可能になります。
実例:ガラス瓶からアルミへ切り替えた理由
Zeveroのあるお客様は、ガラス瓶から100%再生アルミ缶へ切り替えました。その結果、カーボンフットプリントを50%削減し、EPRコストを80%低減できました。成功の要因は、コンプライアンス・排出削減・製品設計を統合した包括的アプローチにあります。すべての製品で同様の切替ができるわけではありませんが、適切なチームとデータを早期に結集すれば、達成し得る成果の幅が広がることを示しています。
包装と脱炭素を両立させる5つの方法
包装がまだサステナビリティのロードマップに十分組み込まれていない場合は、今すぐ次を始めましょう。
- 包装ポートフォリオの監査を行い、形態・素材・重量を把握する
- サプライヤーと、リサイクル可能性・再生材使用の準備状況について協議する
- 包装・排出量・コンプライアンスを連携させるため、データを一元化する
- 主要指標に対する変更の影響をモデル化し、トレードオフを評価する
- 共有目標と機能別KPIを設定した部門横断の協働体制を構築する
着手が早いほど、将来の義務を的確に管理し、戦略からビジネス価値を引き出しやすくなります。
結論
EPRやPPWRといった規制はルールを変えています。同時に、包装を「気候課題」「財務リスク」「戦略的機会」として捉える必要性を企業に突きつけています。対応が遅れれば、コスト上昇やシステムの不整合に直面する恐れがあります。データ、連携体制、先を見据えた計画に投資する企業は、排出削減、コンプライアンス達成、そして循環型・低炭素経済への確信を持った対応において、より強固な立場を築けるでしょう。
Zeveroでは、データを具体的なアクションへとつなげるご支援をいたします。ぜひ一度ご相談ください。