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GHGプロトコル スコープ3基準の改訂:変更点と今後の見通し

業界ニュース
Yee Chow
Yee Chow
サステナビリティ戦略・実施責任者
GHGプロトコル スコープ3基準の改訂:変更点と今後の見通し

GHGプロトコルのCorporate Value Chain (Scope 3) Standard(以下、スコープ3基準)は、企業がスコープ3排出量(バリューチェーン全体の間接排出量)を算定・報告する方法を定めた基準で、2011年以来初めての改訂が進められています。この基準は、主要なサステナビリティ報告フレームワークのほぼすべての土台となっており、CSRD、ISSB、SSBJ、CDP、SBTiはいずれもこれを参照しています。基準が変われば、その上に成り立つすべての枠組みも変わります。

2026年3月31日、GHGプロトコルはフェーズ1進捗報告(Phase 1 Progress Update)を公表しました。これは、20か国以上の65名で構成される技術作業部会が、2024年9月以降42回の会合を重ねて進めてきた改訂プロセスの、初めての具体的な成果です。元の基準は2011年以来更新されていません。パブリックコメント用の全体草案は2026年半ば、改訂版の最終基準は2027年後半の公表が見込まれています。本記事では、提案されている6つの変更点、その影響を受ける企業、企業が今取り組むべきことを解説します。

GHGプロトコル スコープ3基準とは?

2011年に公表されたGHGプロトコル スコープ3基準は、購入した製品・サービスから投資、販売した製品の使用まで、15のカテゴリーにわたって企業がバリューチェーン排出量をどのように算定・報告するかを定めています。世界の多くのサステナビリティ報告フレームワークが拠って立つ、基準となる方法論です。

今回の改訂の影響は、基準そのものにとどまりません。2025年9月、GHGプロトコルとISOは、調和された国際基準を共同で開発する正式なパートナーシップを発表しました。改訂版スコープ3基準は正式なISO規格の基礎にもなる可能性が高く、規制上の要求事項だけでなく、世界中の調達や認証の場面にも組み込まれることになります。

改訂のフェーズ2もすでに始まっており、カテゴリー別の算定範囲の見直しとサーキュラリティを扱っています。以下で説明するフェーズ1進捗報告は、厳密なスコープ3報告のあり方を大きく変える、6つの横断的な変更に焦点を当てています。

スコープ3基準の6つの変更案とは?

1. スコープ3カテゴリーごとのデータ種別の内訳開示

現在、企業はカテゴリーごとにスコープ3の合計値を1つ報告し、通常はデータソースを文章で説明しています。提案では、各カテゴリーを算定に用いたデータの種類ごとに分け、割合ではなくCO2e換算の絶対量(トン)で報告することが求められます。

分類方法はまだ確定していませんが、提案されている区分は、一次データまたは活動量ベースのデータ、金額ベースまたは環境拡張産業連関(EEIO)による推計、そして内訳を示せない企業のための「未分類」を区別するものです。検討されているアプローチは2つあり、1つはデータの具体性で分類する方法、もう1つはデータソースと算定方法を掛け合わせたマトリクスで整理する方法です。

最終的な分類がどのような形になっても、効果は同じです。各スコープ3カテゴリーに占める金額ベース推計の割合が初めて公開され、企業間で直接比較できるようになります。EEIOベースの推計に大きく依存してきた組織は、その依存度が開示の中ではっきりと見えるようになります。

GHGプロトコルは、同様の内訳開示要件が将来の改訂でスコープ1とスコープ2にも拡大される可能性があることも示しています。スコープ3向けにデータ種別のタグ付けの仕組みを構築する企業は、3つのスコープすべてに対応できるよう設計しておくべきです。

2. 95%のカバー率の下限

現行の基準は、すべてのスコープ3排出量を算定し、除外する場合はその理由を示すよう求めていますが、定量的な基準値は設けていません。改訂案では、必須スコープ3排出量の少なくとも95%をカバーするという明確な下限が設けられます。

必須スコープ3とは、カテゴリー1~15の必須部分を指します。任意のスコープ3と新設のカテゴリー16(後述)は、この計算から完全に除外されます。

必須排出量の最大5%までは除外できますが、除外分は定性的な説明ではなく、定量化したうえで開示し、理由を示す必要があります。除外分が5%の上限内に収まっていることを確認するため、企業は除外を選んだ分も含め、必須スコープ3の100%を定量化しなければなりません。その方法として、ホットスポット分析が明示的に認められています。

例外が1つ維持されています。最終用途が実際に不明な中間製品の下流排出量(カテゴリー9、10、11、12)は、5%の基準とは別に除外できます。

5%という数値は、SBTiとCDPがすでにスコープ3の除外を扱う方法と一致しているため、これらのフレームワークで報告している企業にとってはなじみのある考え方です。正式な要件としては新しいものの、その背景にある考え方は新しくありません。

除外に関する標準的な表記方法も提案されており、すべてのスコープ3報告で統一された形式で除外を開示することが求められます。

3. 企業単位のサプライヤー按分は均質なサプライヤーに限定

サプライヤーの企業単位の排出量を購入した製品に按分できるのは、そのサプライヤーが均質な場合に限られます。均質とは、事業全体で排出量が比較的一様であり、企業全体の平均値が購入した特定の製品を実際に代表しているといえる状態です。

事業部門、施設、製品の種類によってGHG排出原単位が大きく異なる多角化したサプライヤーについては、企業単位の按分は認められなくなります。企業はデータ階層をさらに下りる必要があります。理想は製品レベルのゆりかごからゲートまでの排出量データです。これは購入した特定の製品について、原材料の採取から工場出荷までの排出量を測定するもので、按分そのものが不要になります。製品レベルのデータが得られない場合は、活動・工程・生産ライン単位、次に施設単位、その次に事業部門単位のデータへと進む必要があります。

この変更は、現在サプライヤーの企業平均値に基づいて構築されている多くのカテゴリー1のインベントリに直接影響します。大規模で多角化したサプライヤーの企業単位データを用いてきた企業は、それらのサプライヤーが均質性の要件を満たすかを確認し、満たさない場合はより良いデータがどこで得られるかを特定する必要があります。

4. 必須スコープ3と任意スコープ3の分離報告

必須スコープ3排出量と任意スコープ3排出量を、1つの開示合計値にまとめることはできません。すべてのサステナビリティ開示で、この区別を明確に表示する必要があります。

新たにカテゴリー16が設けられ、「促進された活動(facilitated activities)」を対象とします。これは、報告企業のサービス、製品、インフラによって可能になる、開始される、または影響を受ける第三者の活動から生じるバリューチェーン排出量で、企業が取引収入を得ているものの、その活動を所有・運営していないものを指します。サブカテゴリーには、保険契約と保険金支払い(16.1)、引受と発行(16.2)、その他の金融活動(16.3)、ライセンス活動(16.4)があります。カテゴリー16は、ほとんどの企業にとって任意です。

例外はカテゴリー16.5の燃料・エネルギーの流通で、石油・ガスの流通業者には必須とされます。

GHGプロトコルはカテゴリー16の算定ガイダンスを提供しません。これらのサブカテゴリーで報告する企業は、既存の外部基準、主にPCAFのパートA、B、Cを参照するよう求められています。GHGプロトコルが基準本文の中で外部の基準を名指しで直接参照するのは、これが初めてです。

5. カテゴリー15がすべての企業に必須となり、算定範囲も拡大

投資と投融資排出量を扱うカテゴリー15は、これまで主に金融機関向けとして扱われてきました。改訂案ではこれが明確化され、投資を持つすべての企業が投資を算定に含める必要があります。株式、債券、プロジェクトファイナンスを保有する非金融企業も対象です。

カテゴリー15の対象となる投資の種類も明示的に列挙されました。財務的支配のある株式(15.1)から、少数持分(15.3)、社債(15.4・15.5)、プロジェクトファイナンス(15.6)、リテール向け債権(15.7)、ソブリン債(15.8)、さらに投資信託、ETF、資産担保証券、その他の金融商品(15.9~15.11)までが含まれます。これまでカテゴリー15に含まれていた保険、引受、現金預金などの金融活動は、新設の任意カテゴリー16に移ります。

算定範囲も大きく広がります。現行基準では投資先のスコープ1とスコープ2が求められていますが、改訂案では、すべてのカテゴリー15の投資について、投資先のスコープ1、スコープ2、必須スコープ3を算定することが義務付けられ、関連性の判定による除外もありません。これにより、排出量の大きいセクターで重要な排出量を除外できた抜け道がふさがれます。

企業はまた、投資ポートフォリオの帳簿価額のうち何%を投融資排出量の算定に含めたかを開示する必要があります。株式投資の按分式も更新され、分母に株式と負債の両方を含めることで、PCAFパートAと整合させています。

非金融企業の多くにとって、この点の実務上の影響は限定的です。ただし、大きな投資ポートフォリオを持つ企業には重要な影響があります。

6. 検証状況の開示とデータ品質目標

スコープ3インベントリの一部でも検証を受けた企業は、その状況を標準化された表示「Verified(検証済み)」「Partially verified(一部検証済み)」「Not verified(未検証)」で開示する必要があります。これは必須項目ですが、検証を実施した企業にのみ適用されます。検証を行っていない企業に、その旨の開示は求められません。

一次データに基づくスコープ3の割合や、固有のデータを提供するサプライチェーン上の取引先の割合などの指標を用いて、データ品質の目標を設定し、毎年の改善を追跡することは、必須ではなく推奨事項とされています。基準値は企業が自ら設定しますが、目標を設定し進捗を追跡することが期待されています。

関連する推奨事項として、使用する排出係数に適用されるカットオフや除外は5%以内とし、地域別の排出係数は国境を越える流れを考慮すべきとされています。

誰が、いつ影響を受けるのか?

改訂の影響は一様には及びません。次の3つのグループで、時期が大きく異なります。

SBTiの認定目標を持つ企業は、最も明確かつ直接的な影響を受けます。SBTiはGHGプロトコルの方法論を明確に義務付けており、2026年から2028年にかけて発効が見込まれる新しいSBTi Corporate Net-Zero Standard(CNZS v2)は、改訂版GHGプロトコルを参照する形で策定されています。SBTiの認定目標を持つすべての企業は、5年ごとの必須の見直し時に、更新された方法論を採用する必要があります。現在、世界で10,000社以上がSBTiの認定目標を持っており、対応までの時間はすでに動き出しています。

義務的な報告制度の対象企業、つまりCSRDや、オーストラリア、ブラジル、チリ、香港、マレーシア、シンガポールなど30以上のISSB基準に沿った法域の企業も、影響を受ける可能性が高いものの、時期はより遅くなります。これらの制度はGHGプロトコルに沿った方法論を参照しており、改訂内容をほぼ確実に取り込みますが、自動的にすぐ反映されるわけではありません。実務上、改訂版の方法論が規制上の要求事項に正式に組み込まれるのは、2029年から2030年ごろになると考えられます。投資家の期待やベストプラクティスとしての報告は、規制よりも早く変わっていきます。

CDPの報告企業などは、影響を受ける可能性は高いものの、時期の予測はより難しくなります。CDPはGHGプロトコルの方法論に追随しており、通常は毎年の改訂サイクルの中で1~2年遅れて反映します。GRI、EcoVadis、B Corpも同様で、程度の差はあれGHGプロトコルの方法論を参照していますが、それぞれ独自の更新サイクルで動いています。

想定されるスケジュールは次のとおりです。

マイルストーン想定時期
GHGプロトコルがパブリックコメント用の全体草案を公表2026年半ば
改訂版スコープ3基準の最終版を公表2027年後半
SBTi CNZS v2が発効し、SBTi参加企業は5年ごとの見直し時に移行を開始2026年~2028年
ISSBが改訂基準を評価し、IFRS S2の改訂に向けた協議を開始早くて2028年
ISSB基準に沿った各法域が個別に国内規制を更新2029年以降
CDP、GRI、EcoVadisが各自の改訂サイクルで遅れて更新並行して進行

企業は今、何をすべきか?

今回の進捗報告を受けて、直ちに求められる対応はありません。基準はまだ確定しておらず、提案された変更を義務化したフレームワークもまだありません。ただし改訂案の内容は大きいため、スコープ3の取り組みが定着している企業は、この機会に自社の現状を確認しておくべきです。

今のうちに確認しておきたい問いは次の3つです。

  1. 現在どのスコープ3カテゴリーを除外しており、その排出量を定量化していますか?提案されている95%のカバー率の下限では、除外した排出量について定性的に理由を示すだけでなく、定量化することが求められます。定量化せずにカテゴリーを除外してきた組織は、いずれ対応が必要になります。今のうちに差を把握するのは難しくありませんが、期限が迫る中でインベントリを作り直すのは容易ではありません。
  2. 各スコープ3カテゴリーのうち、現在どの程度が金額ベースですか?データ種別の内訳開示要件により、その内訳がカテゴリーごとに絶対量(トン)で公開されます。自社のデータ品質の状況を今把握している企業ほど、開示が義務化される前に説明の仕方を整え、改善の優先順位をつけやすくなります。
  3. カテゴリー1のサプライヤー按分に、多角化したサプライヤーの企業平均値を使っていませんか?使っている場合、均質なサプライヤーへの限定が導入されると、データ階層を下りる必要があります。影響を受けるサプライヤーと、より良いデータの入手先を特定しておくことは、基準の確定時期にかかわらず有益です。

GHGプロトコルとISOのパートナーシップにより、改訂版の基準が正式なISO規格にもなる可能性が高まっています。多くのスコープ3の取り組みを支える方法論は、2028年までに大きく変わる見込みです。今のうちに改訂案に照らして自社の取り組みを確認しておく企業は、最終版の公表を待つ企業よりも有利な立場に立てます。

スコープ3の変化への対応はデータから始まる

GHGプロトコルの改訂は、スコープ3報告に求められる水準がどこへ向かっているかを示しており、その方向は一つです。データの品質、カバー率、透明性への要求は高まっていきます。現在のスコープ3データの状況を把握し、金額ベースの推計に頼っている箇所を知り、除外分を定量化できる企業は、そうでない企業よりもはるかに有利な立場にあります。

Zeveroは、その基盤づくりを次のように支援します。

  • GHGプロトコルとISO 14064-1に沿った方法論でスコープ1・2・3の排出量を算定し、各フレームワークが求める、検証可能で監査に対応できるデータを提供します。
  • スコープ3インベントリ全体のデータ品質を追跡し、各カテゴリーのうち金額ベースの割合と、一次データの改善が最も必要な箇所を把握できるようにします。
  • 年次報告から継続的なモニタリングへ移行し、スコープ3データを常に最新で意思決定に使える状態に保ちます。

この体制は早く整えるほど有利です。Zeveroがどのようにお手伝いできるか、ぜひご覧ください。

お読みいただきありがとうございます。

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