規制
GHGプロトコルは10年ぶりに大幅な改訂が進められており、Scope2は特に大きな変更が見込まれる分野の一つです。近年、電力網の脱炭素化が進み、企業による再生可能エネルギーの導入が増える中で、現行のScope2基準はこうした変化に十分に追いついていませんでした。
GHGプロトコルの改訂草案では、企業が電力を調達する方法や再生可能エネルギー証書の活用方法、さらにマーケット基準による排出量算定方法を見直すための新しい要件が示されています。
Scope2排出量の報告を行うすべての企業や団体にとって、これらの変更は重要です。以下では、現在提案されている内容と、それが貴社の報告にどのような影響を与える可能性があるかについて、概要を説明します。
Scope2排出量とは?
Scope2排出量とは、購入した電力、蒸気、熱、冷熱の消費に伴う間接排出の温室効果ガス排出量を指します。これらの排出は現場外で発生しますが、企業のエネルギー使用によって生じます。
Scope2が改訂される理由
当初のScope2ガイダンスは2015年に公表されました。それ以来、再生可能エネルギー市場は急速に進化しています。電力購入契約(PPA)や電力そのものとは切り離して取引される証書(アンバンドル証書)、新たなデジタル追跡システムなどの登場により、低炭素電力の調達手段は大きく広がりました。しかし現状の複雑さに対し、ガイダンスで定められた報告ルールは十分に対応できていません。このため、報告内容の一貫性が欠け、「再生可能」電力の定義を巡る混乱が生じたり、実際の送電網への影響を正しく反映していない主張が見られることがあります。改訂版ガイダンスは、報告数値全体の透明性・比較可能性・信頼性の向上を目的としています。
提案されている主な変更点
1. マーケット基準報告における時間・地域単位でのマッチング
最も大きな変更点は、より厳格なマッチングルールの導入です。提案されている更新案では、企業は再生可能エネルギーの購入を、電力が消費される時間帯と送電網の地域の両方で一致させる必要があります。これにより、遠隔地の発電事業者から年間の認証を購入しただけでは、マーケット基準報告の対象とならない可能性があります。代わりに、企業は再生可能エネルギーの供給が、消費と同じ時間帯かつ同一の送電網エリア内で実際に行われたことを示す証拠が必要になります。
2. 証書の品質基準の強化
再生可能エネルギー証書(REC)や原産地保証(Guarantees of Origin)を含むエネルギー属性証書(EAC)は、今後はより厳格な品質要件を満たすことが求められる見込みです。これらの要件には、発電時期、追加性、供給可能性、データの精度などが含まれます。これは、「どの証書でも有効とみなされる」という従来の考え方からの転換を示すものです。今後は、より高い品質基準を満たした証書のみが対象となります。
3. ロケーション基準で用いる排出係数に関するルールの更新
ロケーション手法は引き続き維持されますが、排出係数を選定する際の優先順位がより明確になります。企業は、利用可能な場合には、より詳細で精緻な電力系統データを使用することが求められます。これにより、地域間の報告の一貫性が一層向上することが期待されます。
4. 影響算定に関する独立したガイダンス
GHGプロトコルは、影響算定、すなわちシステム全体への影響をモデル化するための独立したガイダンスを導入することを計画しています。これは、回避排出量など、より広範な影響を推計するアプローチを指します。このガイダンスは、Scope2の報告に代わるものではなく、より広範な気候影響を分析・モデル化する企業のための別枠の枠組みとして提供されるものです。
5. 段階的導入と移行
本改訂案では、すべての企業が時間単位のマッチングを直ちに導入できるわけではない点が考慮されています。中小企業や高度な計量システムを利用できない企業については、段階的な導入や移行措置が認められる見込みです。
本改訂が企業に与える影響
マーケット基準の報告がより厳格に
現在、多くの企業はScope 2排出量のマーケット基準報告に対応するために、電力とは切り離して取引される証書に依存しています。新ルールの下では、特に地域関連性や時間的一致がない場合、これらの証書の多くが対象として認められなくなる可能性があります。
エネルギー調達戦略の見直しの必要性
信頼性の高いマーケット基準報告を維持するため、企業は次のような調達方法への移行を検討する必要があります:
- 地域別電力購入契約(PPA)
- バンドル型証書
- 時間単位で一致する再生可能エネルギー供給
- オンサイト発電
- トレーサビリティが確保された再生可能電力メニュー
これにより調達戦略、サプライヤーとの連携、そして長期契約のあり方にも影響があると考えられます。
より正確なデータとシステムが不可欠に
電力消費の詳細データ、証書のメタデータ、正確な系統境界はいずれも、これまで以上に重要になります。十分なデータ基盤を持たない企業は、更新された要件に対応するために、新たなツールの導入やサプライヤーとのより緊密な連携が求められる場合があります。
報告の比較可能性向上
変更により複雑性は増しますが、Scope2報告の信頼性と比較可能性は向上します。これにより、ステークホルダーは企業間・業種間の差異をより正確に把握できるようになります。
今すぐ行うべきこと
1. 現行のマーケット基準の取引手段の見直し:PPA、証書、供給事業者が提供する電力商品を整理し、提案されている要件下で引き続き利用可能なものを把握しましょう。
2. データ準備状況をチェックする:時間単位の消費データへのアクセスが可能か、また供給業者が十分な詳細の証書情報を提供できるかを確認してください。
3. エネルギー供給業者と早めに相談する:電力会社や仲介事業者が、トレーサビリティのある地域別または時間別対応の再生可能電力製品を提供できるかを確認しましょう。
4. 社内体制の整備:調達、サステナビリティ、財務など関係部門で早期に連携し、必要な業務フローやシステムを整えることで、後の混乱を減らすことができます。
5. パブリックコンサルテーションへの参加を検討する:公開意見募集は2025年10月20日から2026年1月31日にかけて、2回実施されました。企業は、実現可能性や移行期間、実務上の課題についてフィードバックを提供しました。
まとめ
提案されている改訂は、Scope2排出量の報告方法における大きな変更をもたらします。ロケーション基準とマーケット基準の報告方法は維持されますが、信頼性の高いマーケット基準報告に求められる水準は一層厳しくなっています。すでに高品質な気候変動情報開示に取り組んでいる企業にとって、これらの変更は報告を強化し、排出量の数値を実際のエネルギー使用量とより適切に整合させる絶好の機会となります。
※本記事は2025年11月19日に初公開しました。
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