基礎知識
要点まとめ
- 境界は、PCFの数値が実際に何を意味するかを決めます。2社のサプライヤーが同じ製品のカーボンフットプリントを算定しても、異なるライフサイクル境界を使えば、どちらも正しいまま、まったく異なる数値になります。
- 自社が作成するPCFには必ずシステム境界を明記し、サプライヤーにデータを依頼する際には期待する境界を必ず指定してください。境界が明示されていないことは、PCFの数値を比較・活用できない最も一般的な原因です。
ゆりかごからゲートまで(cradle to gate)は原材料の採取から製品が工場から出荷されるまでを、ゆりかごから墓場まで(cradle to grave)は使用と廃棄を含む製品のライフサイクル全体を対象とする、製品カーボンフットプリント(PCF)のシステム境界です。2社のサプライヤーが同じ部品のPCFを提出して数値が一致しない場合、最も考えられる理由は、どちらかの誤りではなく、境界を引いた位置の違いです。PCFの作業では、境界の設定が結果を大きく左右します。境界は、排出量の数値にどのライフサイクル段階を含め、どれを除外するか、つまりその数値が実際に何を意味するかを決めます。境界の位置について合意していなければ、2社が同じ製品のPCFを算定しても、どちらも正しいまま、まったく異なる数値になることがあります。
PCF算定で最も一般的な2つのライフサイクル境界が、ゆりかごからゲートまでと、ゆりかごから墓場までです。両者の違いを理解すると、自社のPCFが何を示し、誰にとって役立ち、市場の他の数値とどう比較できるかが見えてきます。PCFとLCAの関係については、PCFとLCAの違いもご覧ください。
ゆりかごからゲートまでとは?
ゆりかごからゲートまでは、ライフサイクルの一部を対象とする見方です。原材料の採取(ゆりかご)から、製品の出荷準備が整う時点(ゲート)までの製品の道のりを評価します。そのため、顧客への輸送、使用段階、使用後の廃棄はすべて除外されます。
ゆりかごからゲートまでは、材料、エネルギー、調達物流について行動につながるデータが得られるため、特にサプライチェーンの文脈では、PCFで最も一般的な範囲です。理由は単純です。サプライヤーが測定、管理、検証できるのは、自社の事業と上流のサプライチェーンで起きていることだけです。製品が工場を出た後に顧客がどう使うかは、サプライヤーには把握も管理もできません。
このため、購入企業がスコープ3のデータ依頼の一環としてサプライヤーにPCFを求める場合は、ゆりかごからゲートまでが標準的な方法になります。また、環境製品宣言(EPD)で必須となる最小範囲でもあります。ただし、多くのEPDはこれ以外のライフサイクル段階も含んでいます。
ゆりかごから墓場までとは?
ゆりかごから墓場までは、ライフサイクル全体を対象とする見方です。原材料の採取、加工、製造、輸送・流通、使用段階、そして廃棄、リサイクル、焼却といった使用後の処理まで、製品のあらゆる段階を含みます。そのため、消費者向けの主張、認証済みの製品ラベルの取得、2つの完成品の同一条件での比較に適しています。
ゆりかごから墓場までは、本格的なライフサイクルアセスメント(LCA)で一般的に採用される方法です。製品の気候影響の全体像を最も完全に示すもので、使用段階や使用後の処理で大量の排出が生じる場合に特に重要になります。たとえば洗濯機は、生涯排出量の大半を製造時ではなく使用時に排出します。使い捨てのプラスチックボトルは、ゆりかごからゲートまでの算定では完全に見落とされる排出を廃棄時に生じます。こうした製品では、工場のゲートで算定を止めると、最も大きな排出を見落とすことになります。
| ライフサイクルの段階 | ゆりかごからゲートまで | ゆりかごから墓場まで |
|---|---|---|
| 原材料の採取 | 含む | 含む |
| 設計・製造 | 含む | 含む |
| 梱包・流通 | 含む | 含む |
| 使用・メンテナンス | 含まない | 含む |
| 使用終了 | 含まない | 含む |
| 廃棄 | 含まない | 含む |
製品カーボンフットプリントで境界が重要なのはなぜですか?
PCFの作業で最もよくある混乱の原因は、境界が明示されていない、または一致していないことです。調達チームが境界を指定せずにサプライヤーにPCFを依頼すると、サプライヤーはゆりかごからゲートまでの数値で回答し、双方とも別々のものについて話していることに気づかない場合があります。購入側はサステナビリティ報告のためにライフサイクル全体の数値を期待しているかもしれません。一方、サプライヤーが提供したのは製造から出荷までの数値です。どちらも間違いではありませんが、測っているものが異なり、文脈なしに並べて示すと誤解を招きます。
算定方法にかかわらず、PCFの数値にはシステム境界を明示すべきです。実際にはこれが省かれることが多く、その結果、互換性のない数値が誰にも指摘されないまま、サステナビリティ報告書やサプライヤーデータベースに並ぶことになります。
境界は、スコープ3の各カテゴリが実務でどう機能するかにも直接関わります。最終用途がわからない中間製品は通常ゆりかごからゲートまでで評価し、最終製品はゆりかごから墓場までで評価すべきです。購入企業が購入した製品・サービスによるスコープ3カテゴリ1の排出量を算定する場合、通常はサプライヤーのゆりかごからゲートまでのPCFを使います。それらの製品の下流の排出は、カテゴリ1ではなく、スコープ3の他のカテゴリに計上されます。
境界の位置を把握し、それを明示することで、PCFデータは技術的に網羅されているだけでなく、実際に使えるものになります。
どちらの境界を選ぶべきですか?
適切な境界は、誰が求めているか、データを何に使うかによって決まります。
ゆりかごからゲートまでを使う場合:
- サプライヤーとして、B2BのPCFやスコープ3のデータ依頼に回答する
- 材料、部品、中間製品のEPDを作成する
- 製品ポートフォリオ全体で上流のスコープ3排出量の範囲を把握する
- 製品の下流での用途が不明、または顧客によって大きく異なる
ゆりかごから墓場までを使う場合:
- 使用段階で大きな排出が生じる消費者向け完成品を評価する
- 消費者向けの環境主張を行う、または認証済みの製品ラベルを申請する
- 2つの完成品を同一条件で比較する
- ライフサイクル全体の把握が必要な、科学的根拠に基づく削減目標を設定する
| 状況 | ゆりかごからゲートまで | ゆりかごから墓場まで |
|---|---|---|
| 顧客からのスコープ3やPCFのデータ依頼に回答する | ✓ | |
| 材料や部品のEPDを作成する | ✓ | |
| 製品ポートフォリオ全体で上流のスコープ3排出量の範囲を把握する | ✓ | |
| 下流での用途が不明な中間製品 | ✓ | |
| 消費者向け完成品を評価する | ✓ | |
| サステナビリティに関する主張を行う、または認証ラベルを申請する | ✓ | |
| 2つの完成品を同一条件で比較する | ✓ | |
| 科学的根拠に基づく削減目標を設定する | ✓ |
PCFプログラムを構築する企業にとっての意味
最初から範囲を正しく設定することは、事務的な決定ではありません。プログラム内のすべてのPCFの数値の品質と比較可能性を左右します。
PCFプログラムを拡大する際に企業が直面する最も一般的な問題は、サプライヤー間で範囲がそろっていないことです。あるサプライヤーはゆりかごからゲートまでの数値を、別のサプライヤーはライフサイクル全体の数値を、3社目は上流の原材料の排出をまったく含まない自社の製造工程だけの数値を提供します。3つとも境界のラベルがないまま同じサプライヤーデータベースに入ります。その結果、一見網羅的でも、意味のある比較や集計ができないデータセットになります。
解決策は、原則としては単純でも、実践は簡単ではありません。データを集める前に期待する境界を定め、サプライヤーに明確に伝え、ラベルのない数値ではなく、検証済みでラベル付きの数値を中心にデータ収集プロセスを組み立てることです。
Zeveroは、最初からこうした一貫性を組み込めるよう企業を支援しています。調達の入札、スコープ3報告、規制対応に使える、比較可能で追跡可能な数値で製品カーボンフットプリントを算定できます。
よくある質問
PCFの依頼に回答する際、サプライヤーはどちらの方法を使うべきですか?
ほとんどのB2Bの場面では、ゆりかごからゲートまでが期待される範囲です。スコープ3カテゴリ1の算定のためにPCFデータを求める顧客が必要とするのは、購入時点までに製品に含まれる排出量、つまりゆりかごからゲートまでの数値です。依頼で境界が指定されていない場合、サプライヤーは回答前に確認し、回答では使用した境界を明示すべきです。
EPDとは何ですか?どの境界を使っているかはどうすればわかりますか?
環境製品宣言(EPD)は、ライフサイクルアセスメントに基づいて製品の環境性能を標準化された形式で開示する文書です。システム境界は製品と適用する規格によって異なり、多くの材料や中間製品ではゆりかごからゲートまで、一部の完成品ではゆりかごから墓場までが使われます。いずれの場合も、境界はEPD文書自体に記載されています。自社の排出量算定にEPDのデータを使う場合は、数値を適用する前に、記載された境界を必ず確認してください。
PCFはどのくらいの頻度で再計算する必要がありますか?
製品、そのサプライヤー、または生産工程に大きな変更があったときです。EUのエコデザイン規則(ESPR)の対象製品では、デジタル製品パスポートの要件により、継続的な更新は任意の取り組みではなく規制上の義務となります。
サプライヤーは同じ製品について、ゆりかごからゲートまでとゆりかごから墓場までの両方の数値を提供できますか?
はい。場合によっては、両方を提供すると役立ちます。B2Bの顧客(スコープ3カテゴリ1の算定にゆりかごからゲートまでの数値が必要)と消費者向け市場(ライフサイクル全体に基づく主張が関係する場合がある)の両方に供給するサプライヤーは、両方が必要になることがあります。重要なのは、それぞれの数値に境界を明記し、互いに置き換え可能なものとして示さないことです。
Zeveroがどのように報告作業を効率化できるか、ご紹介します。
ビジネスの成長と環境負荷の低減を両立させる



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