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規制

カリフォルニア州気候情報開示規則:SB 253/SB 261が与える影響

カリフォルニア州の気候情報開示規則である SB 253(気候企業データ説明責任法) と SB 261(気候関連財務リスク法) の要点を整理します。対象範囲、報告要件、スケジュール、実務対応をご確認ください。

カリフォルニア州気候情報開示規則:SB 253/SB 261が与える影響

カリフォルニア州は長年、気候政策をリードしてきました。2023年10月には SB 253(気候企業データ説明責任法)と SB 261(気候関連財務リスク法)を制定し、その先導的な立場をいっそう明確にしました。これら二つの法律は、企業が環境・財務への影響を測定し、管理し、開示するやり方を大きく変えるものです。

州内で事業を行う企業はもちろん、同州の経済と関わりのある企業にとっても、新たなレベルの説明責任が求められます。SB 253とSB 261は透明性を軸に、温室効果ガス(GHG)排出量と気候関連の財務リスクの開示を義務づけます。単なる法令順守にとどまらず、地球規模の気候目標との整合、ステークホルダーからの信頼強化、そして事業の将来性を高める機会にもなります。

本記事では、両法の要件のポイント、企業への影響、そして実務で取るべき対応を分かりやすく解説します。

SB 253とは?

気候変動企業データ説明責任法(SB 253)」は、一定規模以上の企業に温室効果ガス(GHG)排出量の年次開示を義務づける法律です。特徴は、従来より踏み込んでスコープ1・2・3の全範囲での報告を求めている点です。

SB 253の要件

SB 253のもとで、企業は年次のGHG報告に関する詳細要件を守る必要があります。目的は、一貫性、透明性、説明責任の確保です。主な要件は次のとおりです。

  1. 温室効果ガスプロトコルとの整合
    ・スコープ1・2・3を、GHGプロトコルに沿って測定・開示します。
    ・スコープ3は、次のデータの組み合わせを認めます。
      一次データ(サプライヤーや現場から直接収集)
      二次データ(業界平均などの代替データ)
      適切な情報が得られない場合の汎用データ
    → 標準化された方法に従い、複雑なスコープ3でも整合性のある算定を行います。
  2. 公開アクセシビリティ
    ・年次開示は、誰でも見て理解できる形で公開します。
    ・州が委託する報告機関が運営する集中型デジタルプラットフォーム上で、スコープ1〜3のGHGデータを公開します。
  3. 親会社による統合報告
    ・親会社が要件を満たしていれば、子会社は個別提出が不要です。
    ・親会社レベルでの連結報告が可能になり、グループ全体の対応を効率化できます(SB 219により導入)。
  4. 保証要件
    ・段階的に導入します。開始時はスコープ1・2に限定保証、2030年にはスコープ1・2に合理的保証、スコープ3に限定保証を求めます。
    → 説明責任を保ちつつ、正確な報告体制の整備に時間を確保できます。
  5. 違反時の罰則
    ・提出遅延、不備、保証基準未達などは、最大50万ドル/年の行政罰の対象になり得ます。
    ・規制、執行はカリフォルニア大気資源局(CARB)が行います。

SB 253の報告は延期されるのでしょうか?

延期を巡る議論はありましたが、現時点では当初スケジュールどおり進んでいます。2024年、ニューサム知事が2年延期を提案しましたが、期日の変更は確定していません。

SB 261とは?

気候関連財務リスク法(SB 261)は、気候変動が事業、資産、サプライチェーンに与える影響を評価し、その内容を開示することを企業に義務づける法律です。

SB 261の要件

SB 261は、2026年1月1日から開始し、以後2年ごとに報告書の作成を求めます。報告の一貫性と透明性を確保するため、以下の基準に従います。

  1. TCFD/ISSBとの整合
    ・TCFD最終報告(2017年)またはISSB等の同等基準に沿って作成します。
    ・ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標などの主要要素を網羅します。
  2. 気候リスク軽減策の開示
    ・特定したリスクへの緩和策、適応策(実施中または計画中)を具体的に記載します。
  3. 欠落データの説明
    ・不足データがある場合はその理由と、今後の改善計画を明示します。
  4. 公開アクセシビリティ
    ・報告書は自社ウェブサイトで一般公開します。
  5. 親会社による統合報告
    ・親会社が義務を履行していれば、子会社の個別提出は不要です。
  6. 不十分な報告への罰則
    ・契約された気候報告機関が審査し、不備があれば最大5万ドルの行政罰の対象になり得ます。

※ 初回提出期限は2026年1月1日、一般公開が必要です。

SB 219とは?

SB 219(2024年9月提出、正式名称「温室効果ガス:気候変動に関する企業の説明責任:気候関連財務リスク」)は、透明性を保ちつつ実務に配慮するため、SB 253とSB 261を調整する改正案です。企業が指摘する運用上の課題に対応し、柔軟性と明確性を高めます。

SB 219が提出された理由

実務的な実現性を高めるため、次の点を想定しています。
・CARBによる規則最終化の期限延長
・スコープ3の複雑性に配慮した開示スケジュールの調整
・親会社レベルの連結報告を許容
・提出手数料の廃止

SB 219の主な規定

1. CARBの期限延長:最終規則の期限を2025年7月1日まで延長

2. スコープ3の柔軟化:スコープ1・2提出から180日以内のスコープ3提出という縛りを撤廃。開始時期は2027年見込み(詳細はCARBが設定)

3. 統合報告:親会社による一括報告を明確化

4. 手数料の見直し:提出手数料は廃止、年会費は存続

SB 253およびSB 261の遵守対象企業は?

・SB 253:年商10億ドル以上で、カリフォルニア州で事業を行う企業(本社所在地は不問)
・SB 261:年商5億ドル以上で、同州で事業を行う企業

中小企業は直接義務の対象外でも、大企業のサプライチェーンに属する場合、スコープ3対応などで排出量データの提供依頼が増える可能性があります。

企業はいつ報告が必要ですか?

段階的なスケジュールで、2026年から始まります。

SB 253:温室効果ガス(GHG)排出量報告
・2026年:2025年度データでスコープ1・2の報告開始(GHGプロトコル準拠、限定保証)
・2027年:2026年度データからスコープ3を追加(詳細はCARBが確定)
・2030年:2029年度データでスコープ1・2は合理的保証、スコープ3は限定保証が必要

SB 261:気候リスク報告
・2026年1月1日:2025年度の内容で初回報告を提出
・以後、2年ごとに提出

準備方法

SB 253とSB 261への対応は、前倒しの体制づくりが鍵です。コンプライアンスを、サステナビリティ面の競争優位に変えましょう。

  1. 堅牢なデータ基盤の構築
    全スコープの測定、保管、算定、監査対応まで見据えた仕組みを整備します。
  2. バリューチェーンの関与
    サプライヤー等と早期にデータ共有プロセスを確立し、スコープ3の品質を確保します。
  3. 気候リスク戦略の策定
    物理リスク、移行リスクを特定し、財務影響と対策をTCFDやISSBに沿って文書化します。
  4. 保証(監査)準備
    コントロール、エビデンス、手続きの整備を前倒しで進めます。
  5. 規制アップデートの監視
    CARBガイダンスやSB 219の進展を継続的に確認します。

コンプライアンスから気候変動リーダーシップへ

本規制は負担である一方、透明性の向上、投資家との信頼構築、事業のレジリエンス強化につながります。
サプライチェーン全体を見据えた早期対応が、将来の競争力を左右します。

Zeveroの支援

Zeveroは、スコープ1・2・3の測定、可視化、報告に対応するカーボン管理プラットフォームと専門家支援を提供します。排出量トラッキング、気候リスク分析、削減ロードマップまで、実装と運用を伴走します。お気軽にご相談ください。

Zeveroがどのように報告作業を効率化できるか、ご紹介します。

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