基礎知識
取引先から届くCO2排出量の開示要請は、多くの場合「貴社のスコープ1・2排出量」「そのうち当社向け取引に相当する量」「削減目標」の3点を尋ねるものです。サプライヤーの排出量は、発注元企業にとってスコープ3(サプライチェーン上の間接排出)の一部になるため、大手企業は取引先にデータを求めています。
まず取り組む3つのこと:(1) 直近1年分の燃料・電気の使用量を集めてスコープ1・2を算定する、(2) 取引先ごとに排出量を割り振る配分基準を決める、(3) 回答に使った数値と根拠資料を1か所に保存する。
取引先は何を求めているのですか?
環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームは、サプライチェーン排出量を「スコープ1+スコープ2+スコープ3」と定義しています(環境省)。スコープ1は燃料の燃焼などによる自社の直接排出、スコープ2は購入した電気・熱の使用に伴う排出、スコープ3はそれ以外の間接排出で、15のカテゴリに分かれます。サプライヤーの皆さまのスコープ1・2は、発注元のスコープ3カテゴリ1(購入した製品・サービス)に含まれます。詳しくはスコープ3排出量とはをご覧ください。
なぜ今、取引先から求められるのですか?
理由は主に3つあります。
- SSBJ基準の義務化:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2025年3月5日に日本初のサステナビリティ開示基準を公表しました(SSBJ)。金融庁が2026年2月20日に公布した改正内閣府令により、平均時価総額3兆円以上のプライム上場企業は2027年3月期、1兆円以上の企業は2028年3月期の有価証券報告書から適用されます(金融庁)。SSBJ基準ではスコープ3の開示が求められ、SSBJはサプライヤーのデータを使った算定方法についての手引きも公表しています(SSBJハンドブック)。
- CDPサプライチェーンプログラム:CDPによると、2025年には4万5,000社以上のサプライヤーがCDPを通じて情報開示を要請されました(CDP)。
- SBTiの目標設定基準:スコープ3が排出量全体の40%を超える企業は、スコープ3の67%以上をカバーする目標が必要です。その方法の一つが、サプライヤーに科学的根拠に基づく目標(SBT)の設定を求める「サプライヤーエンゲージメント目標」です(SBTi、2023年6月)。
大手企業はどのような要請をしていますか?
- トヨタ自動車:2021年、主要1次取引先に対し、CO2排出量を前年比3%削減するよう要請したと報じられました。同報道では、削減量が取引条件になるわけではないこと、算定ツールの提供や好事例の共有を予定していることも伝えられています(日刊工業新聞/ニュースイッチ、2021年6月)。
- 日立製作所:2024年3月の発表で、全調達パートナーに温室効果ガス削減目標の設定を要請していると公表しています(日立製作所、2024年3月22日)。
- デンソー:サプライヤーと共同での削減と、業界平均値ではなくサプライヤー自身の一次データの活用を進める方針が報じられています(MONOist、2024年10月)。
どのような種類の要請がありますか?
会社単位の排出量は「1年間に自社全体で何トン排出したか」を示します。製品単位のCFPは「製品1個あたり、原材料の調達から廃棄までに何kg排出するか」を示すもので、経済産業省と環境省は2023年3月31日に「カーボンフットプリント ガイドライン」を公表しています(環境省)。
何から始めればよいですか?対応の5ステップ
1. スコープ1・2から算定する
ガス、重油、ガソリンなどの燃料と、購入電力の1年分の使用量を拠点ごとに集め、排出係数を掛けて算定します。表に挙げた要請は、いずれもこの数値が出発点になります。
2. 配分方法を決める
取引先は自社向け取引に相当する排出量を求めることがあります。売上高比、出荷重量比など、どの基準で割り振ったかを決めて記録してください。考え方は配分(アロケーション)の用語解説で紹介しています。
3. 削減目標を設定する
基準年と目標年、削減率を決め、省エネ設備の更新や再生可能エネルギー電力への切り替えなど、具体的な施策と結びつけます。
4. 回答の一貫性を保つ
複数の取引先から似た質問が届いても、同じ算定結果をもとに回答します。算定範囲や対象期間を変えた場合は、その理由を明記します。
5. 製品単位へ展開する
会社単位の算定が整ったら、主要製品からCFPの算定に進みます。工程ごとのエネルギー使用量を把握しておくと、製品への割り当てに使えます。
よくある失敗は何ですか?
- 取引先ごとに算定範囲や期間が異なり、数字が食い違う
- 金額ベースの業界平均値だけで回答を続け、自社の削減努力が数字に表れない
- 根拠資料を残しておらず、翌年に同じ算定を再現できない
- 会社単位の排出量と製品単位のCFPを混同して回答する
取引先との対話の進め方は、スコープ3報告におけるサプライヤーのエンゲージメントの重要性でも取り上げています。
Zeveroはどのように支援できますか?
Zeveroは、炭素会計ソフトウェアと社内の専門家によるサポートを組み合わせて提供しています。スコープ1・2の算定から始めたい企業向けにはエントリープラン「Zevero Lite」があり、必要に応じてスコープ1〜3全体の算定、製品単位のCFP、EPD(環境製品宣言)へと範囲を広げられます。取引先から届いた質問書への回答方針についても、専門家にご相談いただけます。
取引先からの要請への対応についてご相談の方は、デモのご予約からお問い合わせください。
よくある質問
サプライヤーのCO2排出量は、なぜ取引先のスコープ3になるのですか?
取引先が購入する製品やサービスをつくる過程で出た排出量は、取引先から見るとサプライチェーン上の間接排出にあたるためです。GHGプロトコルの分類では、スコープ3のカテゴリ1(購入した製品・サービス)に含まれます。
中小企業でもスコープ1・2は自社で算定できますか?
燃料と電気の使用量がわかれば算定できます。請求書や検針票から1年分の使用量を拠点ごとに集め、排出係数を掛けて求めます。
取引先ごとの配分はどのように計算しますか?
自社のスコープ1・2の合計に、その取引先の売上高比や出荷重量比などを掛けて求めるのが一般的です。どの基準を使ったかを記録し、毎年同じ方法で計算します。
会社単位の排出量と製品単位のCFPは何が違うのですか?
会社単位の排出量は、1年間に自社全体で排出した量です。製品単位のカーボンフットプリント(CFP)は、製品1つあたりについて原材料の調達から廃棄までの排出量を示します。経済産業省と環境省は2023年3月に「カーボンフットプリント ガイドライン」を公表しています。
SBTを設定しないと取引に影響しますか?
求められる内容は取引先によって異なります。トヨタ自動車が2021年に主要取引先へ前年比3%の削減を要請した際には、削減量が取引条件になるわけではないと報じられました。まずは届いた要請文書で、目標の設定が必須か任意かを確認してください。
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