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既存のSBTi目標を新基準V2.0へ移行する方法

規制
Molly Baxter
Molly Baxter
カーボンコンサルタント
既存のSBTi目標を新基準V2.0へ移行する方法

要点まとめ

  • V2.0への移行時期は業界全体で一律ではなく、企業ごとに異なります。
    まずは、自社で最も早い目標年と5年ごとのレビュー(M5YR)のトリガー日を確認し、再認証の時期を把握しましょう。
  • 準備が必要な主な変更点は、GHGインベントリと目標設定に集中しています。
     
    Scope 1とScope 2をそれぞれ100%カバーする個別目標への変更、インベントリからの除外の廃止、ローリング方式の基準年への移行、さらに移行計画と目標期間終了時の評価が新たな要件となります。
  • 準備は今すぐ始められます。
    最新かつ完全なGHGインベントリの整備、Scope別のデータ管理、さらに実装ヒエラルキー(優先順位)のようなV2.0の新しい考え方を取り入れることで、再認証時の負担を大幅に軽減できます。

SBTi企業ネットゼロ新基準V2.0の公開により、すでに科学的根拠に基づく目標(SBT)の認証を取得している企業から多く寄せられているのが、「既存の目標を新たに設定し直す必要があるのか?」という質問です。

結論から言えば、その必要はありません。

企業ネットゼロ基準 V1またはSBTiの短期目標基準(Near-Term Criteria)のもとで認証された目標を持つ企業は世界で11,000社以上あり、それらの目標は、5年ごとの見直しの規定に従う限り、目標期間中は引き続き有効です。

V2.0で導入されたのは、すべての企業が一律の期限で移行するのではなく、それぞれの目標スケジュールに応じて新基準へ移行する仕組みです。

V2.0公開後も既存のSBTi目標は有効か

すでにSBTi認証を取得している企業にとって最も重要なのは、V2.0の公開によって既存の目標が無効になることはない、という点です。

既存の認証目標を持つ企業は、すぐに対応する義務はありません。ただし、V2.0で導入された変更点について早めに理解を深めておくことで、次回の目標更新時にスムーズに対応できます。実務上は、これまでどおり現在の目標に沿って排出量の削減を進め、報告を続ければ問題ありません。

V2.0への移行は、次回の再認証(Re-validation)のタイミングに行われます。それ以前に対応する必要はありません。そのため、まず確認すべきなのは、自社の再認証のタイミングです。

SBTi目標の再認証はいつ必要になるか

再認証の提出期限は、次の2つの条件のうちどちらか早い方によって決まります。

トリガー1:目標年(ターゲットイヤー)

設定した目標年を迎えた場合、再認証の提出期限は目標年の翌年末です。例えば、目標年が2026年であれば、新しい目標は2027年12月31日までに提出する必要があります。

トリガー2:5年ごとの必須レビュー(M5YR)

もう一つのトリガーが、M5YRです。これは、初回の目標認証日、またはScope 1・2・3すべてを対象とした最新の目標更新日から5年後の月末に到来します。例えば、2021年3月に最初の目標が認証された企業は、2026年3月末がレビューのトリガー日になります。

このトリガー日以降、次の2つの期限があります。

  • レビューを実施し、その結果をトリガー日から6か月以内にSBTi Servicesへ提出すること
  • レビューの結果、新しい目標が必要と判断された場合は、トリガー日から12か月以内に新たな目標を提出すること

レビューを実施したくない場合は、トリガー日より前にScope 1・2・3を対象とした完全な目標更新を提出することでレビューを回避できます。また、目標年まで24か月以内であれば、レビューを省略するWaiver(免除申請)を申請し、目標年に合わせて新しい目標を設定することも可能です。
なお、レビューを実施したからといって、必ず新しい目標が必要になるわけではありません。既存の目標が現行基準を満たしていれば更新は不要で、通常どおり次回の期限を迎えます。一方、基準を満たさない場合は、上記のスケジュールおよび適用バージョンに従って新しい目標を設定する必要があります。

SBTi V1.3.1とV2.0、どちらが適用されるのか

再認証時に適用されるバージョンは、提出時期が移行期間のどこに位置するかによって決まります。企業ネットゼロ基準 V1.3.1による提出は2028年1月31日まで受け付けられます。それ以降は、すべての新規提出でV2.0が必須となります。一方、V2.0による認証(再認証を含む)は2027年2月1日から開始されます。

そのため、実務上は次の3つのケースがあります。

  • 2027年2月1日以前に提出する場合:V1.3.1を使用
  • 2027年2月1日〜2028年1月31日に提出する場合:V1.3.1またはV2.0のいずれかを選択可能
  • 2028年2月1日以降に提出する場合:V2.0を使用

先ほどの例に戻ると、目標年が2026年で再認証期限が2027年12月31日の企業は、この移行期間内に該当するため、V1.3.1またはV2.0のどちらでも選択できます。一方、2026年中に提出する企業は、V2.0の認証受付が2027年2月1日から始まるため、自動的にV1.3.1が適用されます。

自社がカテゴリーAかBかを確認しましょう

V2.0で再認証を行う前に、自社がカテゴリーAとカテゴリーBのどちらに該当するかを確認する必要があります。V2.0では、従来の「一般企業」「SME」「金融機関」といった分類が廃止され、排出量・財務規模・所在地に基づくカテゴリーAとカテゴリーBの2区分へ変更されました。

この区分は、特に3つの要件、Scope 3目標の設定、移行計画の開示、第三者保証に影響します。カテゴリー Aではこれらが必須となりますが、カテゴリー Bでは要件が軽減または任意となります。早い段階でカテゴリーを確認しておくことで、必要な準備や作業範囲を正確に把握できます。特に第三者保証は準備に最も時間がかかることが多いため、早めの確認が重要です。

SBTi V2.0への移行で何が変わるか

V2.0で再認証を行う場合、V1.3.1からいくつかの重要な変更があります。主な変更点は以下のとおりです。

  • Scope 1とScope 2を個別に目標設定
    V1.3.1ではScope 1と2を合わせて95%以上を対象としていましたが、V2.0ではそれぞれ100%を対象とした個別目標が必要になります。
  • ローリング方式の基準年
    固定された基準年ではなく、最新の包括的な排出データが得られる年を基準年とし、更新のたびに見直します。
  • より厳格なGHGインベントリ
    V1.3.1ではScope 1・2およびScope 3のそれぞれで最大5%まで除外が認められていましたが、V2.0ではGHGインベントリ境界内の排出量を除外することは認められません。ただしScope 3については、基準で定義された「企業が実質的な影響力を及ぼせない活動」に関する排出量については例外が認められています。
  • 重要性に基づくScope 3
    カテゴリーA企業では、従来の固定カバレッジ要件に代わり、Scope 3総排出量の5%以上を占める各カテゴリーを個別に対象とする重要性評価が採用されます。
  • 移行計画とガバナンス
    移行計画の策定が必須になります。
    SBTiは、その計画が存在し必要な要素を含んでいるかを確認しますが、内容の質そのものを評価するわけではありません。
  • サイクル終了時の評価
    各目標期間終了時に、目標達成状況を正式に評価する仕組みが導入されます。

さらにカテゴリーA企業では、上記に加えて次の項目について第三者による限定保証(Limited Assurance)が求められます。

  • 基準年データ
  • 低炭素電力(Low-Carbon Electricity)の算定
  • 目標設定に用いた指標

SBTi V2.0への移行に向けて今からできる準備

V2.0への正式な移行は再認証時ですが、それまで待つ必要はありません。

すでに検証済みの目標を持つ企業は、V2.0の2つの特徴、すなわち実施の優先順位を示す実施ヒエラルキー(implementation hierarchy)と、目標に向けて行動し障壁を率直に報告し続ける限りSBTiの仕組みにとどまることを認めるベストエフォート・アプローチを、すでに活用することができます。最も有用な準備は、バージョンにかかわらず次のサイクルで評価対象となる基盤づくりです。

実務的には、以下の項目から始めることをおすすめします。

  • 最も早い目標年とM5YRトリガー日を確認し、再認証時期を把握する
  • Scope 1・2・3すべてについて、除外のない最新のGHGインベントリを整備する
  • Scope 1とScope 2のデータを分けて管理できるようにする
  • 取締役会による監督体制と移行計画策定プロセスを整備する
  • 自社がCategory AまたはCategory Bのどちらに該当するかを確認し、第三者保証やScope 3対応の準備を進める

これらを早めに進めておくことで、再認証時の対応を大幅にスムーズに進めることができます。

Zeveroにできること

既存のSBTi目標を持つ企業にとって、まず重要なのは、現在の目標とV2.0要件とのギャップを把握することです。ZeveroのSBTi V2.0 レディネス評価(readiness assessment)では、現在の目標、GHGインベントリ、EAC(環境属性証書)契約をV2.0要件と照らし合わせて評価し、再認証に向けた優先順位付きのアクションプランをご提供します。また、ZeveroはGHGプロトコルに準拠してScope 1・2・3排出量を算定し、再認証に必要となるGHGインベントリの構築を支援します。ぜひギャップ分析を実施し、自社が次に取り組むべきステップを明確にしましょう。

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FAQs

Scope 1とScope 2をまとめた目標は、V2.0へ移行するとどうなりますか?
V2.0では、毎年の報告要件に変更はありますか?
再認証の時期を迎える前に、V2.0へ移行することはできますか?
既存の長期ネットゼロ目標も引き続き有効ですか?

お読みいただきありがとうございます。

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