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SBTi企業ネットゼロ新基準V2.0のもとで目標を設定する方法

規制
Jasmine Saini
Jasmine Saini
シニアカーボンコンサルタント
SBTi企業ネットゼロ新基準V2.0のもとで目標を設定する方法

要点まとめ

  • V2.0は目標設定ツールではなく、実行のためのフレームワークです。 企業分類から取締役会承認済みの移行計画に至るまでの10のステップで構成され、ガバナンス、データ品質、進捗評価が全体を通じて組み込まれています。
  • Scope1-2は、それぞれ独立した目標として、100%のカバー率が必須になりました。Scope1では3つ、Scope2では2つの方法から選択します。従来の「Scope1・2統合目標」および「Scope2の排出量強度オプション」はいずれも廃止されました。
  • Scope3のカバー範囲は、比率ではなく重要性(シグニフィカンス)に基づいて判定されます。 Scope3排出量全体の5%以上を占める各カテゴリは目標の対象に含める必要があり、その基準を下回るカテゴリについては、正当な理由があれば除外が認められます。

Science Based Targets initiative(SBTi)企業ネットゼロ新基準V2.0は、当初のフレームワーク発表以来、企業の目標設定における最も大きな変更点を導入するものです。これまでのバージョンは主に科学的根拠に基づく目標(サイエンス・ベースド・ターゲット)の設定に重点を置いていましたが、V2.0では企業がその目標をどのように達成するかに、より重点が置かれています。

この変化は、より広範な期待の変化を反映したものです。投資家、規制当局、顧客などのステークホルダーは、企業が「何を達成しようとしているか」だけでなく、「どのように達成しようとしているか」への理解を一層強く求めるようになっています。その結果、目標設定プロセス全体を通じて、ガバナンス、実行計画、データ品質、進捗評価がより重要な役割を担うようになりました。

初めてSBTiの目標設定に取り組む組織にとって、要件は複雑に見えるかもしれません。しかし、プロセスそのものは明確な順序に従っています。企業はまず自社のカテゴリと排出量ベースラインを確立し、その後関連する排出量Scopeごとに目標を設定し、最後に実行を支えるガバナンス体制と実施計画を構築します。

SBTi企業ネットゼロ新基準V2.0での変更点

V2.0における最も本質的な変化は、「野心の設定」から「実行に対する説明責任」への転換です。目標の妥当性検証(バリデーション)のためのフレームワークとしてのみ機能するのではなく、事業計画、投資判断、調達、業務活動そのものに組み込まれることを想定して設計されています。

その他にも、目標設定プロセスに影響する変更が複数あります。

企業は従来の「大企業」と「中小企業(SME)」という区分に代わり、「カテゴリA」または「カテゴリB」のいずれかに分類されるようになりました。

  • Scope1とScope2の排出量は、それぞれ独立した目標でカバーする必要があり、各Scopeの排出量を100%カバーしなければなりません。
  • Scope3の目標は、固定のカバー率基準から重要性に基づくアプローチへと移行しました。
  • 移行計画とガバナンスは、補助的な取り組みではなく、中核的な要件として位置づけられます。
  • 目標は物理インベントリ(フィジカル・インベントリ)に基づいて構築し、市場証書(マーケット・インストゥルメント)は別途報告します。
  • 妥当性検証は、進捗報告・評価・目標更新を含む、構造化された5年サイクルの一部として位置づけられます。

企業は2027年2月1日から2028年1月31日までの間に目標を提出する場合、V1.3.1とV2.0のいずれかを選択できます。2028年2月1日以降、新規提出はすべてV2.0に従う必要があります。

目標設定の流れ(全体像)

V2.0における目標設定プロセスは10のステップで構成されています。各ステップは前のステップを踏まえたものであり、排出量測定から目標提出までを一つの構造化された道筋としてつなげています。

ステップ1:企業を分類する

プロセスはまず、SBTi Servicesへの登録と、自社が該当する企業カテゴリの確認から始まります。このカテゴリによって、どの要件が適用されるかが決まるためです。V2.0では、収益規模、排出量、従業員数、事業を行う地域によって2つのカテゴリが定められています。

2つのカテゴリの内訳は以下の通りです。

  • カテゴリA: すべての国における大企業、および高所得国における中規模企業が該当します。移行計画の開示、基準年の保証(アシュアランス)、Scope3の目標設定がいずれも必須となります。
  • カテゴリB: すべての国における小企業、および低所得国における中規模企業が該当します。カテゴリAと同じ項目は必須ではなく、任意対応となります。

最初にカテゴリを確定させることで、以降のプロセス全体の対象範囲を正確に定めることができます。

ステップ2:基準年を選定し、インベントリを構築する

V2.0では「ローリング・ベースイヤー(移動基準年)」の考え方が採用されています。過去の特定年を固定するのではなく、包括的なデータが入手可能な直近の年を基準年とし、サイクルごとに更新していく方式です。これにより、目標は現在の排出プロファイルに紐づけられ、各サイクルは「リセット」ではなく、脱炭素化の取り組みの継続として位置づけられます。

インベントリ自体の要件もより厳格になります。インベントリの範囲からの除外は一切認められず、すべてのScope、すべてのガスを対象とする必要があります。目標はこの物理インベントリに基づいてモデル化され、Scope2については「ロケーション基準」の数値がこれに当たります。低炭素電力の属性を伝達するエナジー・アトリビュート・サーティフィケート(EAC)などの市場証書は、このインベントリには含まれません。代わりに、実行アクションの一部として個別に集計・報告されます。この「物理インベントリ」と「市場証書」を区別する考え方は、スタンダード全体を通じて一貫しています。

ステップ3:保証(アシュアランス)への準備を行う(カテゴリA)

カテゴリAに該当する企業は、基準年のインベントリデータの品質を、限定的保証(リミテッド・アシュアランス)に対応できる水準まで高めておく必要があります。この対応をベースライン設定の段階で行うことで、目標設定後のサイクルでインベントリデータを再構築する手間を避けられます。カテゴリBの企業についても同様の対応が推奨されますが、必須ではありません。

ステップ4:Scope1とScope2の目標を個別に設定する

V2.0では、Scope1とScope2をそれぞれ独立した目標として設定し、各Scopeの排出量を100%カバーすることが求められます。

Scope1については、企業は以下の3つの選択肢から選び、活動内容に応じて異なる選択肢を組み合わせて適用することもできます。

  • 絶対量削減: 基準年からネットゼロ目標年に向けて直線的な軌道で削減する方式です。
  • 排出量強度削減: SBTiのセクター別パスウェイが存在する場合(鉄鋼、セメント、基礎化学品、建物運用、海運、航空など)にのみ選択可能です。
  • アセット移行: 直線的というより段階的に脱炭素化していく長寿命の資本設備を対象とした方式で、対象アセットポートフォリオの累積排出量上限を定める「サイエンス・ベースド・カーボンバジェット」、または排出設備の廃止・代替について予め定めたスケジュールに基づく「サイエンス・ベースド・マイルストーン」のいずれかを通じて設定します。

Scope1の長期目標が必須となるのは、近い将来(ニアターム)の目標に排出量強度またはアセット移行の方式を用いる場合のみです。

Scope2については、企業は以下の2つの選択肢から選びます。

  • 低炭素電力アライメント: 再生可能エネルギーおよび原子力を含む低炭素電力が、総消費電力に占める比率を高めていく方式です。
  • 絶対量削減: ロケーション基準インベントリに基づく直線的な削減軌道を設定する方式です。熱・蒸気・冷却に伴う排出量がある企業は、この目標区分にまとめて含まれます。

目標サイクル期間中の年間電力消費量の増加率が20%を超えると見込まれるカテゴリA企業は、絶対量削減目標を設定する必要があります。この場合、低炭素電力アライメントは主目標ではなく、任意の追加要素という位置づけになります。

なお、これまでのバージョンでScope2に存在していた、単独の排出量強度オプションは廃止されました。

ステップ5:Scope3のカバー範囲を確認する

V2.0では、従来の固定比率によるカバー率基準に代わり、重要性テストが導入されました。Scope3の目標は、カテゴリ1〜14のうち、単体でScope3排出量全体の5%以上を占めるすべてのカテゴリをカバーする必要があります。この基準を下回るカテゴリ、および企業が排出量への実質的な影響力が限られていることを示せる一部の活動については、各除外について報告と正当な理由の説明を行うことを条件に、除外することが可能です。Scope3目標の設定は、カテゴリA企業には必須、カテゴリB企業には強く推奨される事項です。

ステップ6:Scope3の目標設定アプローチを選択する

対象範囲(バウンダリ)が定まった後、企業はそれに対する実績をどのように示すかを選択します。V2.0では以下の3つの方式が用意されています。

  • 目標対象範囲全体を対象とした、包括的な絶対量削減目標。
  • 自らサイエンス・ベースド・ターゲットを設定し、その達成に向けて進捗しているティア1のサプライヤーまたは顧客の割合の増加を測定する、包括的なサプライヤー/顧客アライメント目標。
  • 特定のカテゴリや高排出活動に排出量が集中している企業向けの、カテゴリ別・活動別の目標(適用可能な手法はカテゴリによって異なります)。

ステップ7:実行のヒエラルキーに基づいて実施計画を策定する

V2.0は目標設定だけで終わりません。目標に対して企業がどのように行動するかについても、明確な実行ヒエラルキー(階層構造)を定めています。まず優先されるのは、効率改善、燃料転換、特定のサプライヤーや顧客への働きかけといった、活動レベルでの直接的なアクションです。電力系統やサプライネットワークのような共有システムに排出量が存在する場合は、スタンダードの整合性基準を満たす市場証書に支えられながら、その共有システム自体に働きかける「アクティビティプール・レベル」でのアクションを取ることができます。セクターレベルでのアクションが認められるのは、大規模展開にまだ至っていない技術など、構造的な障壁によって活動レベルやアクティビティプール・レベルでの十分な対応が実質的に不可能な場合に限られます。企業はそうした障壁を文書化し、より広範なアクションが直接的な対策の代替ではなく補完であることを示す必要があります。

ステップ8:移行計画とガバナンスを整備する

V2.0では、サイエンス・ベースド・ターゲットに関する取締役会レベルの説明責任(実行状況の監督を含む)が必須となりました。すべての企業が移行計画を策定・維持し、カテゴリA企業は目標の妥当性検証(ターゲット・バリデーション)完了から15か月以内にその計画の開示を行います。この計画は、目標と実行アプローチが確定した後に策定されるため、その企業が目標達成に向けて実際にたどる道筋を反映したものとなります。妥当性検証の段階でSBTiが確認するのは、計画が存在し、必要な要素を含んでいるかどうかであり、計画の質や実現可能性そのものを評価するものではありません。

ステップ9:任意の認定プログラムを検討する

V2.0には、企業が今後のサイクルの計画に組み込むことのできる、2つの任意プログラムが含まれています。1つ目はScope2の時間単位マッチング(アワリー・マッチング)を評価するもので、電力使用量が大きい企業は、この認定を取得するかどうかにかかわらず、時間単位でマッチした電力の割合を報告する必要があります。2つ目は2027年に開始予定の「Ongoing Emissions Responsibility(継続的排出責任)」プログラムで、対象となる気候関連コントリビューションを通じて継続的な排出量に責任を持つ企業を認定するものです。参加は2035年まで任意ですが、それ以降はカテゴリA企業は、ネットゼロ目標年までに100%へと拡大していく形で、継続的排出量の最低1%をカバーする適格なカーボン除去を支援することが必須となり、長寿命の除去プロジェクトの比率も高めていくことが求められます。いずれのプログラムも、直接的な排出量削減の代替ではなく、それを補完するものとして中核的な目標と並立する位置づけです。

ステップ10:レディネス評価を活用する(任意)

提出前に、企業は任意でSBTiのレディネス評価を利用することができます。これは、現在の目標とインベントリデータをV2.0の要件と照らし合わせ、対応が必要なギャップを特定する、技術専門家によるレビューです。目標を妥当性検証のために提出する前の、任意の最終チェックという位置づけです。

妥当性検証後はどうなるのか

V2.0では、単発の妥当性検証に代わり、継続的な5年サイクルが導入されます。目標の妥当性検証が完了すると、企業はScope1・2の排出量や実行上の障壁とともに、進捗状況を毎年公表します。サイクルの終了時には、目標に対する実績を測定する「サイクル終了時評価」を実施します。カテゴリA企業については、この評価を支えるデータについて独立した保証を受ける必要があります。その後、更新された基準年を基準として、次のサイクルの目標を提出します。目標を完全には達成できなかった場合、目標年時点の排出量が高くなるため、次のサイクルではより大幅な削減が求められることになります。

Zeveroができること

V2.0のもとで目標を設定するには、まず完全な排出量インベントリと、各Scopeに適した手法の選定が出発点となります。Zeveroは、GHGプロトコルに準拠したScope1・2・3の完全なインベントリを、カテゴリ単位での分解表示とともに提供しており、本ガイドで解説した5%の重要性基準を満たすScope3カテゴリの特定を支援します。Scope1・2・3それぞれの手法選択に悩む企業に対しては、Zeveroの目標設定支援が、企業のアセット構成、セクター、排出構造に合ったアプローチのモデリングをサポートします。ZeveroによるV2.0対応の詳しい解説については、SBTi企業ネットゼロ新基準V2.0ガイドをご参照ください。自社のScope1・2・3のプロファイルに適した目標設定手法について詳しく知りたい方は、お問い合わせページからご相談ください。

【ホワイトペーパー】SBTi企業ネットゼロ
新基準 V2.0 徹底解説

FAQs

V2.0のもとでネットゼロ目標の設定は必須ですか。
目標を達成できなかった場合、どうなりますか。
初めて目標設定を行う企業は、今すぐ設定すべきか、V2.0を待つべきですか。
V2.0のもとでも、業種別のセクター・スタンダードは適用されますか。

お読みいただきありがとうございます。

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Zeveroがどのように報告作業を効率化できるか、ご紹介します。

ビジネスの成長と環境負荷の低減を両立させる