基礎知識
要点まとめ
- 多くの場合、出発点は限定的保証です。CSRD、SBTi V2.0、カリフォルニア州SB 253、日本のSSBJ基準はいずれも限定的保証から始まり、CSRDでは限定的保証が唯一の水準となっています。CDPはスコアリングで2つの水準を区別していません。
- 2つの水準を分けるのはテストの深さです。合理的保証ではより広範な手続が行われるため、早い段階でデータのレビューと承認のプロセスを整えておくと、後の移行が容易になります。
- 保証は中堅企業にも広がりつつあります。SBTi V2.0のカテゴリーAには高所得国の中規模企業も含まれる一方、縮小後のCSRDの対象範囲では中堅企業の多くが対象外となっています。
第三者保証(第三者検証)とは、独立した外部機関が企業の報告データを確認し、その信頼性について結論を表明することです。結論の確信の程度によって「限定的保証」と「合理的保証」の2つの水準があり、主要なフレームワークの多くは限定的保証から始まります。合理的保証はより高い水準で、より広範な作業を伴います。
CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)では、Aスコアを得るために報告した環境データの検証が必要です。Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)は、改訂版のCorporate Net-Zero Standard V2.0のもとで、大企業に対し、目標設定の基準となる基準年排出量データについて独立した第三者保証の取得を求める予定です。EU、カリフォルニア州、日本の制度も、対象企業に保証を義務付けているか、段階的に導入しつつあります。
2026年には、EU規則の変更、SBTiの改訂基準、新たな国際保証基準など、2つの水準の違いがより重要になる動きが複数ありました。本記事では、2つの水準の違い、各フレームワークが求める水準、排出量インベントリを保証に向けて準備する方法を解説します。
2026年に保証をめぐって何が変わったのか?
- EUオムニバス:オムニバス簡素化パッケージの一部である指令(EU)2026/470により、合理的保証への移行計画が撤回され、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)における保証水準は限定的保証のみとなりました。
- SBTi V2.0:2026年6月に公表された改訂版Corporate Net-Zero Standardでは、大企業区分であるカテゴリーAに対し、目標の基準年インベントリ(目標設定の基準となる排出量ベースライン)について独立した第三者保証を求めています。V2.0に基づく検証は2027年2月に受付が始まり、移行期間中は旧版のV1.3.1も引き続き利用できます。
- ISSA 5000:国際監査・保証基準審議会(IAASB)が公表した国際サステナビリティ保証基準(ISSA)5000は、2026年12月15日以後に開始する期間から適用され、両方の保証水準を対象としています。
限定的保証と合理的保証の違いは何か?
2つの水準の主な違いは、保証提供者が示す確信の程度と、それを裏付ける作業量にあります。
| 項目 | 限定的保証 | 合理的保証 |
|---|---|---|
| 確信の程度 | 意味のある水準だが、合理的保証より大幅に低い | 高いが、絶対的ではない |
| 結論 | 消極的形式:重要な虚偽表示があると信じさせる事項に気づかなかった | 報告数値が報告規準に従って適切に作成されているという意見 |
| 手続 | 主に質問、分析的手続、文書の閲覧 | 範囲がより広く、通常は裏付けとなる証拠に照らした詳細なテストを含む |
| 内部統制 | 全体的な統制環境を理解する | 統制活動(個別のチェックや承認)まで理解する |
| リスク評価 | 開示レベルで実施 | アサーション・レベルで実施 |
| 重要性 | 両水準で同じ | 両水準で同じ |
保証水準をどう選ぶか?
フレームワークが保証水準を定めている場合、出発点は限定的保証です。合理的保証が適用されるのは、2030年以降のカリフォルニア州「気候企業データ説明責任法」(SB 253)のように法律で求められる場合や、ステークホルダーから求められる場合です。IAASBによれば、監査済み財務諸表に慣れている一部の投資家は合理的保証を求めています。上位の水準への移行は、単にサンプルを増やすことではありません。合理的保証では数値の背後にある統制をより詳しく確認するため、データに関するレビューと承認のプロセスがより重要になります。
検証・妥当性確認・保証はどう違うのか?
- 検証(verification):温室効果ガス検証の国際規格であるISO 14064-3において、年間のスコープ1・2インベントリなどの過去データを調べ、重要な誤りがなく報告規準を満たしているかを判断すること。独立した外部機関が実施する場合、第三者検証となります。
- 妥当性確認(validation):ISO 14064-3において、プロジェクトによる排出削減見込みなど、将来に関する記述の前提と方法を評価すること。
- 保証(assurance):報告情報について示される確信の程度。限定的保証または合理的保証のいずれかで、結論または意見として表明されます。
実務ではこれらの用語は重なり合っており、第三者検証の業務は、2つの保証水準のいずれかによる意見または結論で締めくくられます。
各フレームワークが求める保証水準
| フレームワーク | 位置付け | 保証水準 | 時期 |
|---|---|---|---|
| CSRD(オムニバス後) | 従業員1,000人超かつ純売上高4億5,000万ユーロ超の企業に義務 | 限定的保証のみ | 欧州委員会が2027年7月1日までに基準を採択。縮小後の対象範囲は2027年度から |
| カリフォルニア州SB 253 | カリフォルニア州で事業を行う売上高10億米ドル超の企業に義務 | スコープ1・2は限定的保証、2030年から合理的保証 | 初回報告期限は2026年11月10日 |
| SBTi V2.0 | カテゴリーAは必須、カテゴリーBは強く推奨 | 最低でも限定的保証 | 2027年2月1日に検証受付開始。2028年2月1日以降の新規申請で必須 |
| CDP | 任意。Aスコアには検証が必要 | 限定的保証または合理的保証。スコアリング上の区別はなし | 各開示サイクル |
| 日本(SSBJ基準) | プライム市場上場の大企業(時価総額5,000億円以上)に義務 | 限定的保証。当初2年間は特定の情報のみが対象 | 時価総額に応じて2028年3月期、2029年3月期または2030年3月期 |
| 英国サステナビリティ報告基準(UK SRS) | 保証は義務ではない。対象企業は保証の取得有無を開示する必要あり | 定めなし | 2027年1月1日以後に開始する期間。初回報告は2028年 |
日本の第三者保証制度(予定):金融審議会ワーキング・グループ報告(2026年1月、金融庁)では、SSBJ基準の適用義務化の翌年から第三者保証を義務付け、保証水準は限定的保証とする方針が示されています。当初2年間の保証範囲は、スコープ1・2、ガバナンス及びリスク管理とされています。
なぜ中堅企業も対象になりつつあるのか?
縮小後のCSRDの対象は、従業員1,000人超かつ純売上高4億5,000万ユーロ超の両方を満たす企業のみであるため、中堅企業の多くは対象外です。一方で、SBTi V2.0ではこうした企業の一部がカテゴリーAに該当する可能性があります。カテゴリーAの企業は、スコープ1・2・3を含む目標の基準年インベントリについて、少なくとも限定的保証を取得する必要があります。次の2つの基準のいずれかを満たす企業がカテゴリーAに該当します。
- すべての国:純売上高4億5,000万ユーロ以上、またはフルタイム換算(FTE)従業員1,000人以上。
- 高所得国:スコープ1・2排出量が10,000 tCO₂e以上、または次の3つのうち2つを満たすこと(総資産2,500万ユーロ以上、純売上高5,000万ユーロ以上、FTE従業員250人以上)。
例えば、高所得国である英国で設立され、FTE従業員260人、純売上高6,000万ユーロの製造業者は、3つの規模基準のうち2つ(FTE従業員250人以上、純売上高5,000万ユーロ以上)を満たします。CSRDの基準を大きく下回っていても、この企業はカテゴリーAに該当します。判定には、直近2期の財務諸表の連結グループ数値の平均を用います。企業の国は、最終親会社の設立国で判断します。より広い要求事項についてはSBTi V2.0の目標設定ガイドで解説しており、区分の定義はCorporate Net-Zero Standardに定められています。
保証基準と保証の提供者
ISSA 5000は世界共通の基礎となる基準として位置付けられつつあり、各法域で順次採用が進んでいます。ISO 14064-3は温室効果ガスに関する主張の検証と妥当性確認の要求事項を定めており、組織、プロジェクト、製品の各レベルの主張に適用されます。このほか、AccountAbilityのAA1000AS v3や米国公認会計士協会(AICPA)の証明業務基準も用いられています。
用いる基準は、報告先のフレームワークや組織が受け入れているものである必要があります。CDPはISSA 5000とISO 14064-3を受け入れていますが、合意された手続、事前保証、内部検証といった簡易な確認は受け入れていません。カリフォルニア州大気資源局(CARB)は、2026年12月15日以後に開始する業務についてISSA 5000を受け入れることを提案しており、あわせてISO 14064-3(追加の認定が必要)、AA1000AS v3、AICPAの基準も受け入れるとしています。
保証は法定監査人が提供できるほか、CSRDのもとでは、加盟国が独立保証サービス提供者(基準への準拠を評価する認定を受けた組織)を認めることもできます。日本では、保証業務実施者を登録制とする方針です。英国では財務報告評議会(FRC)が保証提供者の任意登録制度を整備中で、登録は提供者を推奨するものではないとされています。
排出量データの第三者検証にどう備えるか?
保証提供者は、認められた方法に照らして排出量インベントリをテストします。GHGプロトコルとISO 14064-1に沿った、監査に対応できる方法論に基づく算定であれば、保証提供者にとって明確なテストの基礎となります。一般的な業務は5つの段階で進み、それぞれの準備は保証提供者が着手する前から始められます。
- 範囲、水準、規準を合意する:保証提供者が算定範囲、保証水準、報告規準を確認します。準備としては、まず適用されるフレームワークとそれが受け入れる基準を確認し、組織境界と事業境界を文書化します。
- リスクを評価する:保証提供者はインベントリ、データソース、統制を確認し、重要な虚偽表示が生じやすい箇所を特定します。主要な数値のレビューと承認、排出係数の登録簿、見積りと除外の記録など、文書化された統制があれば、保証提供者は明確な証拠に基づいて作業できます。
- 証拠をテストする:保証提供者は数値を元の記録と照合し、計算を確認します。請求書、メーター検針値、サプライヤーデータなど、主要な数値が元の記録までたどれれば、この作業は容易になります。スコープ3のデータについても、ソースと算定方法ごとに分類し、見積りと限界を文書化しておく必要があります。
- 指摘事項を確認する:保証提供者は指摘事項を企業と共有し、確認を求めます。ここでの準備は、保証提供者からの問い合わせ窓口となる担当者を決め、業務開始前に社内の準備状況チェックを済ませておくことです。チェックでは、数値のサンプルを元の記録と照合します。
- 保証報告書を発行する:保証提供者は合意した水準で保証報告書を発行します。経営陣がインベントリを確認・承認した証拠を保管し、CDP、SBTi、顧客など、報告書を提出・共有する先についても計画しておく必要があります。
Zeveroによるご支援
Zeveroは、独立した保証提供者が確認できる排出量インベントリの構築を通じて、こうした要求事項を実務に落とし込むお手伝いをしています。Zeveroの組織のカーボンフットプリントは、GHGプロトコルとISO 14064-1に沿った方法論でスコープ1・2・3を網羅し、保証提供者がテストできる文書化された基礎を提供します。すでにインベントリをお持ちの場合は、ISO 14064-1に照らしてレビューし、ギャップを確認したうえでその解消を支援し、検証機関がサンプリングする証拠資料の準備をお手伝いします。検証そのものは、常に独立した第三者が実施します。Zeveroは、カテゴリーAの企業が保証を取得する必要がある基準年インベントリを土台とした、SBTiに沿った目標設定も支援しています。
監査に対応できるスコープ1・2・3の完全なインベントリづくりをZeveroがどのように支援できるか、お気軽にお問い合わせください。
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よくある質問
カーボンフットプリントを算定した会社が、その保証も行えますか?
独立性の要件を満たす場合に限られます。ISSA 5000は、保証業務実施者に国際会計士倫理基準審議会(IESBA)の倫理規程に定める独立性の規則に従うことを求めています。CDPも、同じ組織がインベントリの作成と検証の両方を行う場合、検証基準が公平性を確保することを求めています。同じ数値を算定し、その後に保証すると自己レビューのリスクが生じるため、別の会社に依頼するのが最も確実な回避策です。
保証報告書は、他の報告期間や事業の他の部分も対象になりますか?
いいえ。保証報告書の対象は、開始時に合意した算定範囲と報告期間のみです。CDPは毎年、2年ごと、3年ごとの検証サイクルを認めていますが、複数年のサイクルが完全に認められるのは、保証報告書が各年の排出量を対象としている場合に限られます。
保証提供者が重要な虚偽表示を発見した場合はどうなりますか?
ISSA 5000のもとでは、保証提供者は、未修正の虚偽表示が個別または合計で重要かどうかを評価します。重要な虚偽表示が残る場合は、除外事項付きの結論となります。影響が重要であっても特定の領域に限られる場合は限定付き結論、情報全体に広範に及ぶ場合は否定的結論となります。
SBTiの目標の妥当性確認は、データの保証に当たりますか?
いいえ。妥当性確認では、目標をSBTiの基準に照らして確認します。SBTiとその妥当性確認機関は、目標の背後にある排出量データを独立して検証しないため、別途保証業務が必要です。
製品のカーボンフットプリントに関する主張には、別途検証が必要ですか?
自動的に必要になるわけではありません。組織のインベントリに対する保証報告書は、製品レベルの数値には及びません。顧客の要求、プログラム、環境主張などで製品レベルの数値に独立した検証が必要な場合は、別の業務となります。Zeveroの製品カーボンフットプリント(PCF/CFP)は、製品レベルの算定を支援します。
Zeveroがどのように報告作業を効率化できるか、ご紹介します。
ビジネスの成長と環境負荷の低減を両立させる



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