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IFRS S1・S2とは?財務・サステナビリティ責任者向けガイド

規制
Ben Richardson
Ben Richardson
共同創設者兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー
IFRS S1・S2とは?財務・サステナビリティ責任者向けガイド

IFRS S1・S2は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2023年6月に公表したサステナビリティ開示基準です。IFRS S1はサステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項を、IFRS S2は気候関連開示を定めています。

投資家はもはや、企業の財務の健全性と気候リスクへのエクスポージャーを切り離して評価していません。規制当局もこの流れに追いつきつつあります。こうした背景から、世界の財務報告を規律する会計の枠組みである国際財務報告基準(IFRS)は、サステナビリティにまで対象を広げました。

経理責任者、CFO、サステナビリティ担当者にとって、これは報告する内容、データの責任者、そして気候情報に求められる厳密さの水準が変わることを意味します。本記事では、IFRSの枠組み、新しいサステナビリティ開示基準の要求事項、そしてそれが今の組織にとって何を意味するのかを説明します。

IFRSとは?

IFRSは「International Financial Reporting Standards(国際財務報告基準)」の略称です。IFRS財団のもとで活動する国際会計基準審議会(IASB)が開発する、国際的に認められた会計基準です。その目的は、財務諸表が異なる市場や法域の間でも一貫性・透明性・比較可能性を備えるようにすることにあります。投資家が国境を越えて企業を評価する際、IFRSは共通の比較基盤となります。

EU全加盟国、オーストラリア、カナダ、英国のほか、アジアやアフリカの多くの国を含む140か国以上が、上場企業にIFRSの適用を求めています。最も大きな例外は米国で、米国会計基準(US GAAP)を用いていますが、米国上場の多国籍企業の多くは海外子会社でIFRSに基づく報告を行っています。

実務上、IFRSは主に次の事項を規定しています。

  • 収益をいつ、どのように認識するか(IFRS第15号)
  • 金融商品とリスク・エクスポージャーをどのように開示するか(IFRS第9号)
  • リースを貸借対照表にどのように計上するか(IFRS第16号)
  • 財務諸表全体をどのように構成し表示するか(IAS第1号)

IFRSは経済活動を、構造化され監査可能な財務情報に置き換えます。つい最近まで、サステナビリティ開示はこの枠組みの完全に外側にありましたが、それが変わりつつあります。

サステナビリティはどのようにIFRSの枠組みに加わったのか?

2021年11月、IFRS財団は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)を設立しました。ISSBはIASBと並ぶ組織で、財務報告の枠組みと結びついたサステナビリティ関連の開示基準の開発を担っています。

2023年6月、ISSBは最初の2つの基準を公表しました。

  • IFRS S1:サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項
  • IFRS S2:気候関連開示

いずれの基準も2024年1月1日以後に開始する年次報告期間から発効しますが、実際の適用は各法域での採用に委ねられています。オーストラリア、カナダ、日本、シンガポールなどが国内での採用を進めています。英国では、最近公表された英国サステナビリティ報告基準(UK SRS)がIFRS S1・S2を実質的な基礎としており、義務化の時期にかかわらず、英国企業にとっては早めに対応を進める価値があります。

日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月にSSBJ基準を公表しました。SSBJ基準はISSB基準(IFRS S1・S2)との整合性を基本方針として開発されており、SSBJとISSBは両基準の整合性の継続を確認しています。日本企業への適用についてはSSBJ基準の解説記事をご覧ください。

IFRS S1とは?すべてのサステナビリティ開示の土台

IFRS S1は、気候に限らずすべてのサステナビリティ・テーマに共通して適用される全般的要求事項を定めています。企業のキャッシュ・フロー、資金調達、資本コストに合理的に影響を与えうるサステナビリティ関連のリスクと機会について、一貫した開示の基準線を設けるものです。

IFRS S1の4つの開示領域

  1. ガバナンス:取締役会と経営陣がサステナビリティ関連のリスクと機会をどのように監督しているか。どの委員会が監督を担うか、どの頻度で情報を受け取るか、サステナビリティが戦略や報酬にどう反映されているかを含みます。
  2. 戦略:サステナビリティ関連のリスクと機会が、ビジネスモデル、バリューチェーン、財政状態、計画期間にどう影響するか。短期と長期の両方の影響を開示します。
  3. リスク管理:サステナビリティ関連リスクを識別・評価・優先順位付け・モニタリングするプロセスと、それが組織全体のリスク管理の枠組みにどう統合されているか。
  4. 指標及び目標:パフォーマンスを追跡するための定量的・定性的な指標。設定した目標とその進捗を含みます。

IFRS S1は財務的重要性の考え方に大きく依拠しています。つまり企業が開示するのは、投資家の意思決定に合理的に影響を与えうるサステナビリティ情報であり、単に前向きな姿勢を示すための情報ではありません。この区別は、報告の範囲を決めるうえで大きな意味を持ちます。

IFRS S2では何を開示するのか?気候関連の要求事項

IFRS S2はS1の枠組みを土台に、それを気候関連のリスクと機会に特化して適用します。多くの大企業がすでに任意で採用してきた気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言と密接に整合しています。

IFRS S2の4つの柱

  1. ガバナンス:気候関連のリスクと機会に対する取締役会と経営陣の監督。気候が意思決定の仕組みにどう組み込まれているかを具体的に示します。
  2. 戦略:気候リスク(物理的リスクと移行リスクの両方)が事業に与える影響。ビジネスモデル、戦略、財務計画への影響を含みます。特にIFRS S2では、異なる気候シナリオのもとでの戦略のレジリエンスを評価・開示することが求められ、該当する場合には気温上昇を1.5°Cに抑えるシナリオも含めます。
  3. リスク管理:気候関連リスクをどのように識別・評価・管理しているか、そしてそのプロセスが全社的リスク管理にどう統合されているか。
  4. 指標及び目標:スコープ1(直接排出)、スコープ2(購入したエネルギー)、重要性がある場合はスコープ3(バリューチェーン排出)の温室効果ガス排出量の開示。気候関連の目標、用いた方法論、目標に対する進捗も開示する必要があります。

IFRS S2における物理的リスクには、異常気象、洪水、水ストレス、長期的な気候変化が資産や事業に与える影響が含まれます。移行リスクには、カーボンプライシングなどの政策変更、顧客需要の変化、座礁資産、脱炭素化に必要な設備投資が含まれます。

なぜ気候リスクが財務報告の問題になったのか?

財務部門から最も多く寄せられるのが、「なぜ排出量データが売上高や資産価値と同じ報告プロセスに含まれるのか」という質問です。答えは、気候リスクはすでに財務上の結果に影響を与えているものの、構造化され比較可能な形で開示されているとは限らない、という点にあります。例えば次のような影響があります。

  • カーボンプライシングや規制は、営業コストと資本配分の判断に直接影響します
  • 座礁資産は、特にエネルギー集約型産業において、移行が加速するにつれて貸借対照表上の実際のリスクとなります
  • 物理的な気候事象によるサプライチェーンの混乱は、売上高、利益率、棚卸資産の評価に影響します
  • 脱炭素化のための設備投資は、財務予測と資金調達戦略に織り込む必要があります
  • 資本へのアクセスは気候開示の質とますます結びついており、機関投資家や金融機関は気候リスク評価に基づいて判断しています

投資家が求めているのは将来志向の情報です。昨年何が起きたかだけでなく、気候リスクが将来のキャッシュ・フローや企業価値にどう影響しうるかを知りたいと考えています。IFRS S1・S2は、こうした情報を記述中心のサステナビリティ報告書ではなく、厳密で監査可能な形式で提供するよう設計されています。実務上の意味は、サステナビリティ情報にも財務データと同じガバナンス、内部統制、文書化の水準が求められるということです。

IFRSは組織に何を求めるのか?

IFRS S1・S2に準拠する(あるいは採用が近い法域に備える)には、部門横断での変化が必要です。実務上は次のようになります。

ガバナンスと責任体制を広げる必要があります。取締役会と監査委員会には、サステナビリティ関連財務開示を明確に監督することが求められます。これはサステナビリティ部門だけの責任ではなく、財務部門の経営層の関与と取締役会レベルのオーナーシップが必要です。

内部統制を排出量データにも適用する必要があります。財務データを規律する原則を、炭素・気候データにも適用しなければなりません。排出量の数値を元データまでたどれず、独立して検証できない場合、IFRS S2が想定する開示の水準を満たしません。

財務部門とサステナビリティ部門で方法論をそろえる必要があります。財務部門とサステナビリティ部門の報告内容に食い違い(異なる算定範囲、異なる前提、異なる基準年)があると、投資家や監査人からの信頼を損なうおそれがあります。定義と方法論を部門横断でそろえることは必須です。

シナリオ分析には体系立てた前提が必要です。IFRS S2は、異なる気候の将来像のもとで戦略が持ちこたえられるかを評価するよう求めています。そのためには、用いたシナリオ、その前提、適用した方法論を明確に文書化する必要があります。

データ基盤を目的に見合ったものにする必要があります。部門間で共有されるスプレッドシートは、誤り、バージョン管理の問題、監査証跡の欠落を招きます。IFRSのサステナビリティ開示要求に規模を持って対応するには、一元化され構造化されたデータ管理が必要です。

IFRSに沿った報告のためのデータ基盤をどう整えるか?

多くの組織にとって、現在の報告実務とIFRS S1・S2の要求事項との差は、主にデータ基盤の差です。基準を満たすには次のことが必要です。

  • 事業体、地域、スコープ区分をまたいだ排出量データの一元的な収集
  • 方法論の一貫した適用(すべての事業部門で同じ算定アプローチを用いること)
  • 報告数値を元データまでたどれる明確な監査証跡
  • 気候リスクの前提が財務計画やシナリオモデリングに反映されるよう、財務システムと連携すること
  • 経営陣による監督の仕組み(開示前にデータを確認・照会・検証できること)

これは、データが複数のERPシステム、地域、外部サプライヤーにまたがりやすい、国際的に事業を展開する企業にとって特に重要です。

Zeveroによるご支援

サステナビリティ開示が財務諸表と同じ水準の精査を受けるようになるにつれ、データの品質とトレーサビリティは欠かせないものになります。Zeveroは、財務部門とサステナビリティ部門が排出量データを一元化し、グローバルな事業全体で一貫した方法論を適用し、監査に対応できる明確なレポートを作成できるよう支援します。今のうちに炭素データの基盤を強化しておくことで、IFRS S1・S2の要求事項への対応、投資家の期待への対応、そして国内規制の施行への備えを進めやすくなります。

IFRSに沿った開示に向けて排出量データの準備を進めていますか?現在のデータ基盤の状況を確認するには、Zeveroチームにお問い合わせください。

お読みいただきありがとうございます。

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