炭素強度(カーボンインテンシティ)とは、活動量、生産量、製品などの1単位あたりに排出されるCO₂e(二酸化炭素換算量)を示す指標です。事業規模にかかわらず、どれだけ効率的に事業を運営できているかを示します。

競合する2社が、ともに二酸化炭素排出量を10%削減したと報告したとします。一見すると同じ成果ですが、A社は生産を15%縮小して達成したのに対し、B社は5%成長しながら削減を実現していました。同じ削減幅でも、環境効率という観点ではまったく異なる結果です。

この例が示すように、炭素強度は、組織が効率を高めているのか、それとも規模を縮小しているだけなのかを見分けるための指標です。実際の改善と、誤解を招く統計とを区別することができます。

本記事では、炭素強度の考え方、業種ごとの測り方、そして自社で炭素強度を測定・削減するための実践的な方法を説明します。

炭素強度とは?

炭素強度は、活動量、生産量、または製品1単位あたりに排出される二酸化炭素換算量(CO₂e)を測る指標です。総排出量の削減が注目されがちですが、炭素強度は規模にかかわらず、どれだけ効率的に事業を運営しているかを示します。この指標を使えば、あらゆる規模・業種の企業を比較でき、効率的な事業運営に向けて最も前進しているのはどこかがわかります。

環境パフォーマンスを多面的に把握するため、絶対排出量とあわせて炭素強度を追跡する組織が増えています。たとえば、事業成長に伴って総排出量が増えても、炭素強度が下がっていれば効率は向上していることになります。反対に、事業を縮小して総排出量を減らしても、炭素強度が上がっていれば効率は悪化しています。

絶対排出量と炭素強度の関係は、次の式で表せます。

炭素強度 = 総排出量 ÷ 活動量

言い換えると、総排出量 = 炭素強度 × 活動量です。

この式から、炭素強度を下げても総排出量が自動的に減るわけではないことがわかります。炭素強度を10%改善しても生産量が15%増えれば、総排出量は約3.5%増加します。そのため、気候変動対策に取り組む組織には、炭素強度の目標と絶対量の目標の両方が必要です。

業種によって炭素強度はどう違うのか?

炭素強度の測り方は、業種ごとの事業内容やアウトプットによって異なります。たとえば英国ヨークシャーのビール醸造所が、ガスボイラーから再生可能エネルギーで動く電気ボイラーに切り替えれば、炭素強度をほぼ半減させられる可能性があります。一方、ロンドンのレストランチェーンでは、食品廃棄物の削減や冷蔵設備の最適化といった効率化の取り組みを何年も続けて、ようやく目に見える削減を達成することもあります。

エネルギー業界

発電における炭素強度は、通常1キロワット時あたりのCO₂e排出量(gCO₂e/kWh)で表します。英国の電力網の炭素強度は、石炭から再生可能エネルギーへの移行を反映し、2013年の約450 gCO₂e/kWhから2023年には約160 gCO₂e/kWhへと大きく低下しました。

炭素強度は電源によって大きく異なります。

  • 石炭:約820 gCO₂e/kWh
  • 天然ガス:約490 gCO₂e/kWh
  • 太陽光発電:約48 gCO₂e/kWh
  • 風力:約11 gCO₂e/kWh
  • 原子力:約12 gCO₂e/kWh

これらの数値から、再生可能エネルギーへの転換によって大幅な排出削減が可能であることがわかります。

食品・飲料製造業

食品・飲料製造業では、炭素強度は通常、製品1トンあたり、または売上高100万ポンドあたりのtCO₂eで表します。英国のベンチマークには大きな幅があります。

  • 乳製品加工:1.8~2.5 tCO₂e/トン
  • 食肉加工:2.0~4.5 tCO₂e/トン
  • 醸造:0.2~0.3 tCO₂e/ヘクトリットル
  • 清涼飲料:0.1~0.2 tCO₂e/キロリットル

この差は、必要なエネルギー量、原材料、工程の効率の違いによるものです。たとえば乳製品や食肉の加工は、畜産に由来する上流の排出が大きいため炭素強度が高くなる傾向があります。醸造の炭素強度は、加熱方法や包装の選択によって変わります。

サービス業・運輸業

サービス業では、売上高100万ポンドあたりや従業員1人あたりのtCO₂eなど、財務指標に対する炭素強度を報告するのが一般的です。たとえば専門サービス業では売上高100万ポンドあたり20~30 tCO₂e、リテールバンキングでは15~25 tCO₂e程度です。

運輸の排出は、旅客1人キロあたり、貨物の場合は1トンキロあたりのgCO₂eで測定します。たとえば英国の国内線の炭素強度は旅客1人キロあたり約273 gCO₂eであるのに対し、電化鉄道は約30~35 gCO₂eです。

なぜ炭素強度が重要なのか?

炭素強度を使えば、規模の異なる企業同士でも環境効率を公平に比較できます。年間1万バレルを生産する小規模な醸造所は、世界的なビール大手と絶対排出量で比べることはできませんが、新しい手法や地元調達によって、1バレルあたりの炭素強度では上回る可能性があります。

この指標は事業の成長にも対応できます。英国気候変動委員会(CCC)は、多くの業種が成長と脱炭素化を同時に進める必要があることを認めており、このバランスは絶対量の目標だけでは捉えきれません。

規制の枠組みにも炭素強度の指標が取り入れられています。英国のSECR規則(英語)は、対象企業に対し、絶対排出量に加えて少なくとも1つの強度指標を報告するよう求めています。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、比較可能性を高めるために強度ベースの指標を推奨しています。

投資家は、効率性やカーボンプライシングのリスクを評価するために炭素強度を活用しています。ISO 14064規格にも強度指標が含まれており、組織は事業活動に対する排出量を追跡し、より正確なサステナビリティ報告を行うことができます。

炭素強度は、非効率な部分の特定にも役立ちます。どの工程や製品が最も多く排出しているのか、どこを改善すべきかがわかります。

自社の炭素強度はどう計算するのか?

最初のステップは、適切な活動量指標を決めることです。良い指標は次の条件を満たします。

  • 排出量と直接関係している
  • 事業活動に比例して増減する
  • 測定しやすい
  • ステークホルダーにとって理解しやすい

食品・飲料企業でよく使われる分母には、次のようなものがあります。

  • 製造:製品のトン数または生産数量
  • サービス:売上高またはFTE(フルタイム換算)従業員数
  • 不動産:床面積(m²)
  • 運輸:旅客人キロまたはトンキロ

データ収集には、スコープ1、2、3にわたる排出量データが必要であり、報告の方法と範囲に一貫性を持たせることが求められます。

計算でよくある落とし穴は次のとおりです。

  1. 排出量と活動量で、範囲(バウンダリー)の定義が一致していない
  2. 前年からの大きな事業変化を考慮していない
  3. 排出量と相関しない、または複雑すぎる指標を使っている
  4. 報告期間によってスコープ3排出量の含め方が異なる

適切な分母を選ぶことが重要です。たとえば次のような使い分けがあります。

  • 売上高ベースの強度(tCO₂e/100万ポンド):同じ業種内での比較に適しています
  • 物量ベースの強度(tCO₂e/製品トン):業務の効率を反映します
  • 従業員ベースの強度(tCO₂e/FTE):サービス業に有効です
  • 生産ラインベースの強度(kgCO₂e/生産時間):製造の効率だけを切り出して把握できます

炭素強度の目標はどう設定するのか?

効果的な炭素強度の目標は、気候科学と整合しつつ、業種特有の課題を反映したものである必要があります。Science Based Targets initiative(SBTi)は、気温上昇を1.5℃に抑えることと整合する、業種別の強度削減経路のガイダンスを提供しています。

バランスの取れた目標設定の考え方:

  • 短期(1~3年):すぐに実施できる効率改善に注力する
  • 中期(5~7年):より踏み込んだ構造的な変革を実行する
  • 長期(10年以上):ネットゼロ目標と整合させる

強度目標をステークホルダーに伝える際は、それが絶対排出量や気候戦略全体とどう関係しているかを説明しましょう。たとえばTescoは、強度目標をより大きなゼロカーボンへのコミットメントと結びつけることで、効率改善が長期的な気候目標の達成にどうつながるかを示し、ステークホルダーの理解を得ています。

適切な炭素強度の目標を設定するには、野心と実現可能性のバランスを慎重に取る必要があります。食品・飲料企業の場合、このプロセスでは次のような点を検討します。

科学的根拠に基づく目標設定のアプローチ

食品業界は、農業サプライチェーンからの排出が大きいため、脱炭素化に特有の課題を抱えています。SBTiなどのイニシアチブによる業種別ガイダンスは、信頼性のある目標を設定するための枠組みとなります。SBTiのセクター別脱炭素化アプローチ(SDA)は、パリ協定(英語)の目標と整合する強度の削減経路を示しており、自社がたどるべき削減経路を把握するのに役立ちます。

絶対量の目標と強度目標をどう両立させるのか?

炭素強度と絶対排出量の関係には、根本的な緊張関係があります。急成長している食品企業は、炭素強度を下げながらも総排出量が増えることがあります。反対に、売上が減少している企業は、絶対排出量が減っても工程の効率が悪化していることがあります。

最も確実なのは、両方の目標を組み合わせる方法です。

  • 強度目標は、業務効率の改善を促します
  • 絶対量の目標は、総排出量を確実に正しい方向へ動かします
  • 両者を組み合わせることで、炭素管理を多面的に進められます

炭素強度を削減するには?

エネルギー効率の改善

英国の気候変動法は、エネルギー効率の大幅な改善につながってきました。具体的な対策には、LED照明への切り替え(照明のエネルギー使用量を50~70%削減)、スマートなビル管理システムの導入、空調制御の最適化などがあります。ユニリーバは、効率化プロジェクトと再生可能エネルギーの導入を組み合わせ、2008年から2020年にかけて製造における炭素強度を65%削減しました。

再生可能エネルギーの調達

電力購入契約(PPA)やオンサイトの太陽光発電によって再生可能エネルギーに切り替えると、特にエネルギー多消費型の産業で炭素強度を大きく削減できます。たとえばBeluは、持続可能な取り組みと再生可能エネルギーの活用により、2010年以降、炭素強度を72%削減しています。

工程の最適化

バリューストリームマッピングなどのリーン生産の手法は、生産工程における排出のホットスポットを特定するのに役立ちます。生産スケジュールを見直して機械のアイドル時間を減らすことで、エネルギー消費量を10~15%削減できます。

サプライチェーンへの働きかけ

スコープ3排出量は、企業のフットプリント全体の70%以上を占めることも少なくありません。BTなどの企業は、サプライヤーに科学的根拠に基づく目標の設定を積極的に働きかけ、サプライチェーン全体で排出削減を広げています。こうした取り組みを通じて、BTは多くのサプライヤーに炭素強度の削減を約束するよう促してきました。

進捗をどう追跡するのか?

正確な測定は、明確な基準年の設定から始まります。事業の変化には慎重な対応が必要です。GHGプロトコルは買収や事業売却の扱いについて具体的なガイダンスを示しており、比較可能性を保つために基準年を再計算するなどの方法を推奨しています。

外部検証は信頼性を高めます。すべての企業に義務付けられているわけではありませんが、炭素強度データの第三者保証を求める投資家は増えています。ISAE 3410は、強度指標を含む温室効果ガス報告書を対象とした保証の枠組みです。

炭素強度のデータをうまく可視化すると、ステークホルダーの理解が大きく進みます。年ごとの強度の推移を絶対排出量と並べてグラフにすれば、効率改善と全体の影響の関係を示しやすくなります。

炭素強度のまとめ

炭素強度は、組織の効率を把握し、改善するための指標です。絶対排出量だけでは見えにくい改善の機会を明らかにし、規模や成長の度合いが異なる組織同士を公平に比較する基準にもなります。

炭素強度の削減は、環境だけでなくビジネスにもメリットがあります。たとえば次のような効果が期待できます。

  • 効率の向上とコスト削減
  • カーボンプライシングによるリスクの低減
  • 競争上の優位性の強化
  • エネルギー価格の変動に対する耐性の向上

炭素強度を下げた企業は、競合他社よりも財務面で好成績を上げることが多くあります。MSCIの調査によると、2015年から2023年3月にかけて、高排出産業のなかでも再生可能エネルギーやエネルギー効率に重点を置いた企業は、同業他社よりも利益の伸びが速かったとされています。

自社の炭素強度データはどこまで準備できているか?

入札、サプライヤー向けアンケート、SECR報告などで、強度指標の提出を求められる機会が増えています。顧客や規制当局から求められた際にすぐに提出できるかどうかは、信頼できる排出量の数値と、確かな活動量指標を手元にそろえているかにかかっています。

英国の意思決定者502人を対象としたZeveroの調査「UK Carbon Data Benchmark 2026」によると、英国企業が昨年取り組んだ商談や案件の5件に2件で、信頼できるカーボンデータが求められていました。一方で、排出量を測定してから、信頼できる数値が必要とする担当者の手に届くまでには、平均9.1日かかっています。

無料のカーボンデータ・ベンチマークツール(英語)で自社を比較するか、レポートの全文(英語)をダウンロードしてください。

次のステップ

  • 関連するスコープにわたって、基準となるカーボンフットプリントを算定する
  • 自社の事業を適切に表す活動量指標を特定する
  • 現在の炭素強度を把握し、同業他社のベンチマークと比較する
  • 期限を明確にした目標を含む、強度削減のロードマップを策定する
  • 進捗を定期的に追跡するモニタリング体制を導入する

効率の向上と絶対排出量の削減の両方に取り組むことで、経済と環境の両面の目標を支える持続可能な成長への道筋ができます。その第一歩は測定ですが、それはやがてイノベーションと変革につながり、ビジネスと地球の双方に利益をもたらします。

Zeveroは、炭素強度の測定、効果的な目標の設定、効率化を進めるための戦略の実行を支援しています。

炭素強度の削減に取り組みたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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炭素強度とは?意味・計算式と削減方法
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